横山信義『連合艦隊西進す5-英本土奪回』、『連合艦隊西進す6-北海のラグナロク』

5巻の感想を書いてから投稿するのを長らく忘れていたので、この際だから2巻同時に投稿します。

念願の英国本土奪回作戦に挑む日英合同軍。ドイツは接収した英国艦戦を前面に立てて阻止する構えに。ここに英国艦戦同士の戦いが。

英本土奪還作戦が開始され、まずは日英の機動部隊による航空基地との戦いが繰り広げられました。
ここでモノを言ったのが、現地抵抗組織による輸送網遮断。それに潜水艦による本土からの補給破壊でした。
激しい航空戦が展開されましたが、補給が続かなくなったことでドイツ軍の抵抗は弱まり、連合軍が制空権を得たことで上陸が成功します。
ドイツ軍は上陸したばかりの陸上部隊を叩くため、本土より戦艦部隊を出撃させます。
それを阻止すべく出撃したの戦艦大和・武蔵、そして英軍の戦艦部隊。
ドイツ軍の戦艦は鹵獲したキングジョージⅣ級が主力であったため、奇しくも同じ国で生まれた戦艦同士の戦いとなったのです。

一方、枢軸軍から離脱したイタリアですが、ムッソリーニはドイツ特殊部隊の手により救い出されて政権を樹立したため、南北で分裂して戦うことになっていました。
分離した南側にはアメリカが強力な支援を行います。
今まで中立を保っていたアメリカですが、ドイツがソ連都市に無差別爆撃を行って民間人多数が被害に遭ったのが契機となり、世論は連合軍寄りに傾いた結果、イタリア・ソ連への武器支援に力を入れることになっていました。
一時は欧州で覇権を確立したように見えたドイツでしたが各方面において劣勢となっていく様子が描かれましたね。
イギリス軍は世界各地に根拠地があるとはいえ本土を失っているし、日本軍も欧州への補給はしんどいはず。ほぼアメリカのバックアップありきじゃないでしょうか。
特に主力航空機はほぼ置き換わっていますしね。*1
とはいえ、水上決戦は戦艦同士のぶつかりあい。一方的とはならずに激しい戦闘が描かれて、勝負は僅差となったのが著者らしいところです。

最後にイタリアの軍港で事件が起こりました。戦争も終わりを見据えて起きた感じがしないでもないです。歴史的に同じような事件が起きているので、わかりやすいですね。欧州本土でアメリカ軍介入かな。
そこまで来たら、史実に近い流れになって、面白味に欠ける気がしちゃいます。ただ、ソ連が史実より押されている現状、日英軍だけでドイツ本土に攻め込むのは難しいでしょうし。


英本土奪還へ王手をかけた日英連合軍。だが、ヒトラー総統の死守命令を受けたドイツ軍は、ロンドン周辺地域を固め徹底抗戦の構えを崩さない。
都市の破壊を引き起こす市街戦は避けたい英国政府としては、敵を兵糧攻めにして降伏に追い込むしかないと決断。英本土周辺海域にて、互いの援軍と補給を断たんとする激しい海空戦が繰り返されることとなった。
次々と新兵器を繰り出すドイツ軍は英仏海峡制海権を一気に握ろうとし、これまで温存されてきたドイツ大海艦隊をも出撃させた。必勝を期し、日英連合軍艦隊に最後の決戦を挑んだのである!

英本土に上陸を成功させた日英連合軍は占領地を拡大していきます。最終的には首都ロンドンの奪回です。
しかし、ヒトラーの厳命もあり、在英ドイツ軍はロンドンで守りを固めています。空と海で輸送を継続するドイツ軍との熾烈な戦いが展開されます。
特に難敵は史上初のジェット機であるMe262。アメリカからF6FやF4Uを導入した日本軍ですが、速度差は桁違いで歯が立ちません。強いて言えば航続距離が短いところが弱点です。
海上では通常の輸送艦ではもたないため、軽巡などを改装した高速輸送艦も用いられるようになり、妨害しようとする日英軍とのいたちごっこが続いていました。

しかし、イタリアへ支援に出ていた空母が潜水艦から雷撃を受けた事件*2をきっかけにして、アメリカ世論が沸騰。ついにドイツへの宣戦布告となります。
受けて立ったドイツ軍は潜水艦部隊に米東海岸への出撃を命じ、空母を始めとする多数の艦戦を撃沈させました。
また、英本土死守のため、温存していた大海艦隊が出撃。そこにはビスマルクとティルピッツだけでなく、大和を上回る主砲を持つ巨大戦艦も含まれていたのでした。


連合軍へと戦局が傾いていく中、アメリカ参戦で一気に加速するなぁと思っていました。初戦こそ潜水艦にいいようにやられましたが、対潜経験を積んだ日英と組むわけですし。各国に輸出してなお豊富な戦力を揃えられるくらい物量が桁違いですし。
そんな中、史実では計画のみで終ったH級を元にした化け物戦艦が登場し、大和との激戦。ここが最後の山場ですね。著者の作品で戦艦大和が自艦を上回る戦艦と戦うのは初めてだと思います。ただ、いくらスペックで上回っても、練度が話にならないのでは?というツッコミは野暮でしょうか。
一方でドイツのビスマルク+ティルピッツとイギリスのキング・ジョージ5世級戦艦。ライバルとも言える戦艦同士がガチで叩き合うのも見せ場でした。実際は省略されましたが。

決戦が終った後は一気に終戦まで飛びます。東方戦線でもソ連が押し戻してきた以上、あとは史実と似たような流れですからね。
史実と違うのはB29大9投入でドイツの国力ががた落ちしたようで、ベルリンを制圧したのは英米軍だったというくらい。
この世界では日本は犠牲は大きかったものの、連合軍として勝者に立ちました。大和と武蔵は残存しています。戦後の世界が気になるところですね。軍とか体制は残っても、米資本がだいぶ入ってきそう。
あとがきによると、日独対決という同じテーマの過去作品『蒼海の尖兵』シリーズとの違いを出すために意識されていたようです。
日本海軍が初期にUボートに大打撃を受け、変貌していくという点では確かに違いが出されていましたね。

*1:ドイツも英軍機を積極的に活用しているけど。

*2:真実は明かされていない。ドイツ軍人はアメリカの自作自演だと思っている。