横山信義 『烈火の太洋2 太平洋艦隊急進』

昭和一四年一二月、日独伊三国同盟の約定により英仏との戦争に突入した日本は、インド洋攻略に乗り出す。連合艦隊は激戦の末に英国戦艦隊を撃破したが、突然、作戦中止命令を受けてしまう。南シナ海において、日米の軍事衝突が勃発したためだ。やがてアメリカが参戦、日本軍はフィリピンへの攻撃を開始する。

一方、ハワイを出撃した米艦隊はマーシャル諸島を足がかりにフィリピン救援を目指す。だが、日本最強の戦艦である長門陸奥は先の海戦での損傷を修理中で、動かすことができない。40センチ砲戦艦コロラド級三隻を押し立てて決戦を迫る米太平洋艦隊に対して、主力を欠いた連合艦隊に打つ手はあるのか!?

史実よりも2年早く日本が第二次世界大戦に参戦したというシリーズ。
前巻で東南アジアにおける連合国(イギリス、フランス、オランダ)植民地を席巻した日本軍ははインド洋に進出し、派遣されてきたイギリス艦隊との決戦。
劣勢なはずの英航空部隊に翻弄されつつも、かろうじて勝利を収めました。
日本としてはアメリカだけは相手しないことが重要。フィリピン在住の米軍からいくら徴発されても暴発しないよう耐えていました。
しかし、インド洋の決戦後にフィリピン近海にて輸送船団を護送してきた駆逐艦が米艦隊と武力衝突してしまうとの知らせが入ります。
双方が先に相手が発砲したと主張して譲らないために外交交渉も実らず、なし崩しに開戦へ。
明記はされていませんが、参戦の口実を探していたアメリカの目論みを感じますね。
かくして準備を整えたアメリカ太平洋艦隊が出撃。マーシャル諸島を皮切りに空襲をかけてきます。
勝利したとはいえ、主力の戦艦長門陸奥は大きな損傷を受けていたために修理に時間がかかり、出撃できる戦艦は主砲口径に劣る艦のみ。
救いとして米軍は大西洋方面からの増援がなかったため、空母に関しては日本が有利となっていました。

米軍のことだから、じっくり着実に攻めてくるかと思いきや、すぐさまサイパンが空襲されて被害を受けます。
これにGFは大慌て。トラックもサイパンも戦力が整ってなく、航空兵力を増強しようとしていた矢先の奇襲でした。
とにかく、戦艦伊勢・日向・山城・扶桑を中心とした連合艦隊を出撃させ、サイパン付近で待機させます。
しかし、米軍は40センチ砲戦艦コロラド級3隻を含んでいて、主力の戦力比は劣ります。
いかにして勝利を収めるか。山本五十六GF長官は策を練るのでした。

このままアジアにおける連合軍だけを相手にしていれば、日本としては優勢に進められる。
しかし、そうは問屋が卸さず、でした。
予想はしていましたけど、やっぱり今回のシリーズも日米対決となりました。
今までと違うのは開戦時期が前倒しされたため、96式艦戦などの一世代前の航空機が現役であるというのが大きな違いでしょうか。2巻で零戦とF4Fが実戦デビューしましたが、まだ数に限りがあるとしています。96式艦戦の武装の弱さが目立ちましたね。
この時期、航空戦力は補助扱いでしたが、戦艦同士の決戦に航空機を投入した連合艦隊が見事な勝利を収めました。
そうなると、ゆくゆくは航空主兵へと変わっていくと思われますが、どちらにしろ大戦後半は圧倒的な国力を持つアメリカが優位に立つは違いありません。
この時点で独ソは開戦してなく、シベリア鉄道を使った日独の技術交流が活発になっているのが救いでしょうか。
メインとなる海戦だけでなく、欧州を舞台とした外交にも力が入れられているような気がしますね。
これからどのような大戦が描かれていくのかが気になるところです。