横山信義 『烈火の太洋3-ラバウル進攻』

昭和一五年、英仏との戦争に突入した日本に、米国も宣戦を布告。連合艦隊マリアナ諸島において米太平洋艦隊と激突する。航空機の積極活用により勝利を得たものの、この勝利は逆に米国の戦意を高める結果となり、講和の道筋はまったく見えなくなった。
戦線の拡大を望まぬ山本五十六はトラック諸島を根拠地として守りを固めようとするが、米国は長距離爆撃機を繰り出しこれを妨げる。空爆を封じるためにビスマルク諸島ラバウルを押さえるべきとの軍令部の命令が下り、主力戦艦を欠いた連合艦隊は、空母を結集した機動部隊を編成した。対する米太平洋艦隊も空母を中心に据えた艦隊を送り出し、ここに、史上最大の海空戦が開始される!

やはり避けられない運命だったのか。
前巻、マリアナ近海で激突した日米ですが、航空運用に一日の長がある日本に軍配が上がります。
結果的にほぼパーフェクトゲームに近い形となりましたが、損傷した主力艦の修理のため、すぐに動くことはできません。
開戦劈頭で失ったマーシャル諸島を奪回に動くことなく、トラックで守りを固めます。
むしろ動いたのは米軍であり、新鋭重爆B17を繰り出して空から攻めてきます。被害は多くない代わりに空の要塞の異名を持つB17を撃墜するのは配備されたばかりの零戦でも難しい。
これでは安心して泊地として利用できないということで、前線基地となっているラバウル攻略を目標とします。これには英連邦の有力国であるオーストラリアへの牽制の意味も含まれているのでした。
そこで出撃するのは正規空母4隻・軽空母4隻、合計8隻からなる機動部隊。
一方で米軍も壊滅した戦艦に代わり、空母を主力とする部隊を迎撃に派遣。
かくして、史上初の機動部隊同士の決戦が始まるのでした。

開戦時期が早まったというだけで、太平洋方面は概ねいつもと同じ展開になりそうですね。
真珠湾奇襲によってアメリカの世論が沸騰こそしませんでしたが、緒戦の敗北によって意気消沈することなどなく、かえって戦意が高まってしまうという結果になりました。
厭戦を狙うのは長期間あるいは情報戦をしかけるしかないと思うのですが、どちらも日本には不得意ですし。
そして最前線の安全を確保するには敵の拠点を落とさなければならない。
勝利を得て占領地を広げても敵は退いてまた固める(本土ではなく太平洋の島々なので無理に確保する必要はない)。
前線が広がると兵站が延びていき……。と山本五十六が懸念した長期消耗戦に繋がっていきます。

そういえば、史実ではミッドウェー海戦のあった1942年はドイツも東部・アフリカ共に攻勢限界を迎えていた頃です。
作中ではドイツが頑張っている上、地中海の制海権を握っているのが大きな違いではあります。あとシベリア鉄道経由ですが、日独で交流できているのも大きいでしょう。
アメリカもまだ戦力が揃っていなくて、急遽改造した軽空母を出してくるくらいですし。
ともかく、史実よりも開戦が早まったという本作のIFを今後どう活かしていくのかが気になるところです。