横山信義 『荒海の槍騎兵3-中部太平洋急襲』

荒海の槍騎兵3-中部太平洋急襲 (C★NOVELS)

荒海の槍騎兵3-中部太平洋急襲 (C★NOVELS)

内容(「BOOK」データベースより)

開戦直前フィリピンへ移動した米太平洋艦隊によって日本の南方戦略は瓦解の危機に瀕したが、急遽集結した連合艦隊が猛反撃、辛うじて米英主力を撃破した。だが、この機に講和交渉に持ち込もうとする日本の意図は一蹴される。壊滅状態に陥った太平洋艦隊の再建に時間を要すると見た新司令長官ニミッツは手持ちの戦力を以て連合艦隊の戦力を叩く作戦を打ち出した。日本の機動部隊を自軍に有利な海域におびき出し撃滅するのだ。新指揮官の下、大西洋から回航された空母群が真珠湾を出撃する!

初手でフィリピンまで遠征した上、英国東洋艦隊とも協力して決戦に挑み、大敗した米海軍への風当たりは強く、なんらかの戦果をあげる必要が出てきたところで、もともとの領土であったウェーク島に攻め寄せてくるところから始まります。
最前線といえども、占領して日の浅いウェーク島にはさほどの戦力は置いてなく、機動部隊をもって押し寄せた米軍にとっては鎧袖一触。一気に奪い返しにきます。
そこで連合艦隊も本土で改装中の飛龍・蒼龍を除く機動部隊に新たな長官・小沢治三郎を迎えて、反撃に出るというわけです。

この時点では大西洋から戦艦と空母が回航されてきたといっても、主力の空母は日本軍の方が戦力が上ですからね。あえて言えば、米軍は新鋭戦艦サウスダコタが加わったのに対し。機動部隊に随伴するのは比叡・霧島なので主砲口径・防御力とも劣ります。*1
時期的に史実のミッドウェー海戦の前くらいでしょうか。
ただし、東京空襲はなく、講和の申し出を蹴ってはいても、政治的にまずい状況なのはアメリカ側であります。
かくして、回航されてきたワスプを加えて空母3隻が主力の米太平洋艦隊に対し、連合艦隊正規空母4+軽空母2という布陣で戦いが始まります。

率直なところ、いくら日本軍有利とはいえ、うまくいきすぎたかなと思うところはあります。かつての著者の傾向からすると。
確かに米軍は防空巡洋艦の脅威に対して工夫をしてきましたし、日本側は正規空母に損害を受けました。それでも、米軍の空母の撃沈に成功しています。まぁ、この頃の日本軍のパイロットの技量は高かったので不自然ではありません。
その後に米軍が夜戦で砲撃部隊を接近させてきて、空母が危機に陥る展開は著者のシリーズで何度も読んでます。駆逐艦の砲撃を浴びて、少しずつ傷ついていくあたりとか。
護衛の防空巡洋艦が奮闘して次々と駆逐艦を沈めるも、自身も損害を受けて件戦能力を喪失し、あわやという場面で加賀が自力で砲撃して撃退するのがちょっと新鮮だったでしょうか。

日本軍にとってはパーフェクト勝ちではなかったけど、許容できる損害で終わらせることができました(損傷艦は多いので修理に時間がかかる)。
アメリカは今回も敗退して稼働空母が減少したけど、講和を結ぶつもりなど全くなく、逆に翌年になれば次々と戦力が出てくる。懸念点としては人員の損耗くらいでしょうか。
結局、終戦への道は欧州戦線次第となりそうですよね。
でも、あちらは史実とほとんど変わりなさそうな気がするんですが。

*1:戦艦・大和は戦力化されたばかり。