横山信義 『荒海の槍騎兵4-試練の機動部隊』

「作戦名は『金床』――金床を思い切り叩くハンマーのように日本艦隊を叩き潰して貰いたい」

日本の機動部隊をウェーク島近海におびき出して殲滅するという米海軍の作戦は失敗に終わり、逆に米軍の空母部隊が壊滅してしまった。だが連合艦隊の損害も大きく、日米両軍ともに積極策を採れなくなり一年半余――ついに米太平洋艦隊の再建は成る。新鋭空母エセックス級の群れが新型艦上機隊を搭載し出撃。マーシャル諸島を制圧し、勢いに乗る米艦隊は、マリアナ、トラックに攻撃を開始する。果たして米軍の主攻目標はどちらなのか。第一機動艦隊司令長官小沢治三郎中将は、ある決断を下す。

時は1943年の終わりから1944年にかけて。
連合艦隊司令長官山本五十六は米国との講和に向けて海軍大臣に就任。その後を古賀峰一に譲ります。
シンガポールを占領した際に破損したままドック入りしていたイギリス巡用戦艦フッドを鹵獲したものの、主砲の38cm砲は日本では生産してなく、空母改装案を始めとして議論を重ねた結果、戦時中ということで一番期間を短く済ませることに。
すなわち主砲はそのままで、多数の新型高角砲を備え付けた防空戦艦・大雪*1として生まれ変わりました。

開戦当初の大損害で稼働空母数が落ち込み、雌伏の時を過ごしていた米国はその工業力にモノを言わせて、開戦前を凌ぐ大艦隊を繰り出してきました。
その矛先となったのがマーシャル諸島
その猛威によってマーシャル諸島の基地は瞬く間に壊滅状態となります。
次なる標的はいずこか?
物量的に逆転した状況で、第一機動艦隊はトラックにて基地航空隊と協力して迎撃する態勢を取りますが、米軍が空襲を仕掛けてきたのはマリアナ諸島でした。


日米の機動部隊が真っ向から向かい合い、大規模な航空戦を繰り広げたのが今回の特徴です。
猛威を振るった米機動部隊は史実とほぼ同様の規模と内容です。
空母は全てエセックス級インディペンデンス級となり、一新された艦載機とか、レーダーの運用とか、そのまま再現されたら、どこであろうと対抗は難しい最強艦隊ですよね。
日本軍も零戦52型・彗星・天山に転換されているものの、物量を補うほどではありません。
あとは防空用に強化された戦艦・巡洋艦駆逐艦が頼りになるくらいか。
決戦は結論からすると、痛み分けと言っていいのでしょうか。
開戦以来の正規空母が沈み、艦載機も過半数を失ったのは痛いけれど、小手先の策が通用しない相手なので、当たり前と言ったらそうなのかもしれません。
夢はないけど、公平な結果なのだろうと思います。
いったん退いた米軍ですが、補充を受けて再度来襲するあたりがもうね。つくづくチート国家。
ただ、ノルマンディー上陸作戦はヒトラーがまともな判断をしたので、無残な失敗に終わりました。
また、次の大統領選の雲行きが怪しそうなので、もしかしたらルーズベルトが落選するのでしょうか?

*1:鹵獲艦は北海道の地名が付けられる慣習らしい。