横山信義 『荒海の槍騎兵2-激闘南シナ海』

内容(「BOOK」データベースより)

米国太平洋艦隊が突如フィリピンに現われたことにより、真珠湾奇襲攻撃は意義を失った。連合艦隊は作戦中止を決断、機動部隊に帰還命令を出す。一方、南方資源地帯を攻略すべく出撃した部隊が、分断され各個撃破される危機に陥っていた。脱出を図る南方部隊を救うべく、連合艦隊主力は帰還した機動部隊と合流し急ぎ南下するが、待ち受ける米艦隊との真正面からの激突は必至であった。敵味方ともに空母を擁する艦隊同士―史上初・空母対空母の大海戦が南シナ海で始まった!

1巻において連合艦隊が分断された状態で太平洋戦争が開幕。
真珠湾奇襲はならず、機動部隊は帰還の途上。
突如としてフィリピンに現れた米太平洋艦隊とシンガポールに回航されてきた英東洋艦隊と対峙することになった南遣艦隊の苦戦が描かれました。
金剛型戦艦2隻を始めとした犠牲を払いつつ、北上する艦隊と追いすがるプリンス・オブ・ウェールズという場面*1から2巻が始まりました。
そこで本土に立ち寄り補給を済ませた機動部隊が来援し、壮絶なる空襲でプリンス・オブ・ウェールズを撃沈。
史実とは違いますが、洋上を航行中の戦艦を初めて航空機が撃沈するという劇的な場面を見せつけてくれました。

その後も空母6隻を擁する機動部隊は真珠湾の代わりにと大暴れ。
一撃で米太平洋艦隊の戦艦9隻中3隻を沈めました。
日本軍も長門を始めとする主力艦隊が到着し、改めて決戦の機運が高まったところで、戦死したキンメルに変わって指揮を執るパイ中将の選択は…?


今回は連合艦隊総力をあげての決戦ということで、珍しいことに長官である山本五十六自ら長門に乗って指揮を執ります。
しかし、戦力が減った米太平洋艦隊としては、素直に出て行かず、無数の島によって複雑に水路が入り組むフィリピン内海で待ち伏せ、地の利を取ろうというわけです。
わざわざそこに誘い込まれるのは不利ということで、山本五十六は策を練って米艦隊を吊り上げることに。
そして始まった決戦。
結果的に零戦を始めとした航空機の性能のみならず、連合艦隊は質と数の優位を活かして勝利を掴んだと言えましょう。
もちろん、古鷹・加古・青葉・衣笠の防空巡洋艦の見せ場もありました。史実にあった秋月級駆逐艦よりも巡洋艦の方が長10cm高角砲の本数が多いだけあって威力が段違い。
もっとも、大損害を受けた米軍にもマークされてしまったわけで、今後も同様の活躍ができるかどうかはありますが。

とりあえず、アクシデントはあったものの、緒戦は大勝利を収めることができました。
とはいえ戦闘の合間の緊張感もうまく出ていたと思います。
日本軍も戦艦を喪い、空母が損傷したわけで、史実のように相手を侮るようなことは無さそうだと思います。
あとはこれから本格的に増産されるアメリカの化け物じみた戦力相手にどう戦局が進んでいくか。
そういえば、本シリーズでは欧州の情勢がまだ書かれていません。おそらく史実通りに推移していると思いますが、どのように影響するかですね。

*1:旗艦・鳥海が損傷で17ノットしか出せないために追いつかれた。