横山信義 『烈火の太洋5-反攻の巨浪』

航空隊の支援を受けて海戦に勝利した連合艦隊は、根拠地トラックへの脅威を排除できたはずだった。だが、米国はニューギニアアドミラルティ諸島へと進出。新たな航空基地を建設して再びトラックを脅かし始める。 海戦に勝利しても戦況は好転せず、講和への道筋も見えないままだ。
米軍の戦略目標はマリアナ諸島であることは確実。対する連合艦隊はこのままトラックを拠点に堅守するべきか。それとも撃って出て米軍根拠地を攻撃すべきか。
万一、マリアナが陥落するようなことになれば、日本は破滅する。
連合艦隊の総力を結集した第一機動艦隊が出撃する先は――。

これまで本シリーズにおいて日本軍は英軍、続いて米軍相手に勝利を重ねてきました。
しかし、1944年に入るとアメリカの巨大な工業力によって、続々と戦力が出てきます。空母でいえばエセックス級インディペンデンス級が揃って今まで沈めた以上の航空戦力を整えてくるのだからたまったものじゃないですね。
しかも欧州方面ではジブラルタル失陥によって地中海に英海軍が進出。それに伴ってアフリカ沿岸でドイツ・イタリアが敗退します。
この世界では独ソが開戦していないためにまだドイツはもっている方ですが、本土まで空襲を受けているので、不利な状況になってきます。
太平洋方面では海軍が米軍の攻勢をいったん凌ぐも、ニューギニアアドミラルティ諸島への進出を許します。
そして、再度トラック基地への進行を企てていると判明します。かくして再編なった機動部隊で迎撃に向かうのでした。

太平洋戦争としては同盟の関係で開戦が早まった本シリーズ。ミッドウェイ海鮮やソロモンの死闘がなく、日本軍は史実よりも航空戦力を保持している状況です。
それでも巨大な米軍に対抗するのは難しい状況となってきますね。今回の戦いでもまったく同等とまではいきませんが、トラック基地の戦力を合わせれば充分対抗可能。
しかも主力艦戦の零戦では米軍のF6Fヘルキャットに対して厳しくなってきたところで新鋭機が登場。本シリーズの利点でもあるドイツ製発動機のライセンス生産という設定になっています。
今回も航空戦に続いてトラック基地を巡る水上砲雷戦と見どころ充分でした。
結果的に日本軍は辛うじて勝利。しかし損害が多く、同じ海戦が可能かどうか。
ここはやはり講和が重要なのですが、アメリカが応じるとは思えず。そこで蠢動し始めたソ連の動きが鍵となるんでしょうね。