10期・50冊目 『ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり 外伝〈4〉白銀の晶姫編』

内容(「BOOK」データベースより)
陸自自衛官伊丹耀司が金髪エルフのテュカとともに北の辺境から戻って数日―。伊丹が偶然にも北で見つけた「ガラス」のおかげで『門』を造る材料が揃い、特地アルヌスでは、魔導師レレイが中心となり『門』の再建が本格的に始動した。ところが、『門』開通を快く思わない何者かによる妨害工作が頻発し、作業は遅々として進まない。揚げ句、物流拠点であるイタリカで、更なる混乱を招く事態が起こる。燃料・食糧の底も見え始め、いよいよ危機感を募らせていく自衛官達。まさに絶対絶命の状況下、それでもレレイは諦めずに『門』開通の道を探るが―。超スケールの異世界エンタメファンタジー!大人気の外伝シリーズ、ついに完結!

外伝は5巻まで出ていますけど、5巻は挿話・後日談などのエピソードを集めたようで、本編5巻のエピローグに繋がるストーリーとしては今回がラストのようです。
日本への再接続を目的とした「門」の再建がメインとなっていて、その責任者として今回はレレイがヒロインになります。


本土と切り離されたアルヌスの自衛隊始めとする日本人にとっての懸念はいろいろありますが、なんといっても車両や航空機を動かすための燃料不足。
原油自体はエルベ藩国から入手できるようになったのですが、その精製が問題。
小規模実験を経て精製施設を建設するも主に技術的な問題で失敗続き。
ただ中には妨害工作による形跡があり、誰がどのような意図の元に成されているか掴めないのでした。


一方、外伝2巻の大祭典で敗れて以降、逼塞していた公爵令嬢レディですが、父の死や屋敷焼き討ち*1、恋人の死*2など立て続けに不幸に見舞われ、その最中に自身が亡き前皇帝(現皇帝モルトの兄)の血を継いでいることを知ります。
復讐の鬼と化したレディは最終目的である帝位奪取の前に、ライバルである皇女ピニャを蹴落とすためにアルヌスの自衛隊の弱体化を図ります。
具体的には「門」の再建の妨害であり、アルヌスの流通を支えるイタリカの街を押さえること。


レレイを中心として「門」の再建のために石工職人を集めて大理石の加工を始めたのですが、突然イタリカ経由の流通が混乱したためのコスト増加や職人のボイコット等により工事が滞ってしまいます。
それでもレレイはそこには背を押してくれた伊丹のために頑固に工事を推し進めようとします。あの手この手で妨害を図る敵に対して工夫を凝らして乗り越えようとするレレイと自衛隊の面々。果たして「門」の再建は成るのか?


今回、気になっていたアルヌスの自衛隊の置かれた状況や「門」の再建の話が進んだのが良かったですね。
悪役としてパワーアップしたレディ嬢ですが、その設定にずいぶんと後付け感があったのは確か。でも単なる意地悪キャラからの転身、皇帝継承や「門」再開に向けての緊迫感としては重要な位置づけではありました。
レディおよびその配下の陰謀が大掛かりで前半にやりこめられた分、自衛隊側(+レレイやピニャら)の反撃に関しては中途半端で爽快感はあまりなかったのが残念でした。
それにいくつか伏線が未回収*3なのもあって、ついに完結!とはいかない感じでした。
イタリカの状況もちょっと触れていただけなので不満が残りましたしね(代官が戻ったらしいので元通りとなったと思うが)。ミュイ嬢のその後が気になるなー。
私が読んでいるかぎり、Web小説ってきっちり完結するものは少なくて、盛り上がりが収まった後もダラダラ続く(あるいは断絶する)のが多いので、あえてはっきりしないままなんでしょうかね。

*1:タイミング良すぎると思ったけど、日頃の行いが原因だと使用人たちが噂してる

*2:外伝3巻の戦いの渦中でテュカに倒された

*3:母親の名が出たレレイの出生の秘密やロウリィの意味深な台詞