10期・37冊目 『ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり〈4〉総撃編』

ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈4〉総撃編

ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり〈4〉総撃編

内容(「BOOK」データベースより)
20XX年。東京銀座に突如現れた「異世界への門」。門の向こう側『特地』には、手付かずの潤沢な資源、そして、栄華を極める巨大帝国の存在があった。特地で無差別ゲリラを繰り返すゾルザル軍に対し、帝国正統政府との講和を締結した日本政府は、これを契機に自衛隊を総動員して殲滅作戦に乗り出す。一方、世界各地では『門』を原因とする天変地異が観測されはじめる。にわかに巻き起こる『門』閉鎖論。事態打開の鍵を握るのは、唯一『門』を開く能力を手にした魔導師レレイだけだった―国内外のあらゆる思惑から『門』を死守する日本政府。そして、レレイを護衛する異世界美少女達と伊丹。果たして『門』はどうなってしまうのか―?陰謀巡る第4章、開幕。

前巻にて皇帝はじめ講和派貴族が皇都を脱出、イタリカの地で帝国正統政府として名乗りをあげてついに帝国は分裂。
改めて正統政府と講和を結んだ日本政府は自衛隊特地派遣部隊の総力をあげてゾルザル軍の殲滅作戦を始動します。
それに対するゾルザル軍は解放された捕虜将校らの認識によって正攻法ではなく卑怯とも言えるゲリラ的手段で対抗します。
一方、「門」が存在し続けることで両世界に天変地異を始めとする異変が発生していることを伊丹耀司らはその危険性を政府首脳に伝えるのですが、これまでの特地への投資およびそこから得られる資源などの期待が集まる中で対応の難しさは高まるばかり。
そんな中で冥府の神ハーディから唯一「門」の開閉能力を付与されたレレイを巡って表舞台から降りたと思われた人物が陰謀を企もうとしていたのでした。


予定では全3巻で完結するはずのシリーズでしたが、物語の1/3に地震津波が連続する場面が書き連ねてあったため*1東日本大震災の被災者に考慮して、加筆を重ねて全5巻に練り直したようです。
それで今回は伊丹ら主人公チームの活躍はレレイを除いて控えめ。というか伊丹自身はレレイの実験で開いたゲートを軽々しく覗いたために各種検査を受けるために強制入院する羽目になるわ、ロゥリィに迫られたところを警務官に見られて児童福祉法違反の疑いを受けたりと散々です(笑)
どちらかと言うと講和会談において帝国代表となったシェリーが老獪どころか狡猾な本性を露わにしていたり、ゾルザル側近のテューレが古田といい感じになったと思えば意外な展開が待っていたり、政治嫌いになったピニャが本人曰く「芸術」を堪能*2したりと脇役的な人たちのエピソードが盛り込まれていて楽しめましたね。
それになんというか、ストーリーが進んんでいく上で、さまざまな形で異世界間のカップリングが進んでいったのはユニークだったかな。
またマスゴミの象徴かのように登場した小村崎が単なる偏向報道の悪役としてではなく、商業的な立ち位置としてのマスコミ論をぶっていたのが印象的でした。
少なくとも彼は安全な位置から無責任な事を言うだけの人物ではなく、現場主義者でもあることとあえて必要悪としての報道人であることを自認している点が嫌いになりきれない人物ですな。


ついに次巻で最終巻となります。
「門」の問題に関連しての伊丹の処遇とか、ラストに向けての布石は見えていますが、どういうふうに幕を降ろすのか楽しみですね。

*1:おそらく異世界を繋ぐ「門」が存在し続けた影響

*2:梨紗の同人誌(内容は深くは言えない)作成の手伝い