10期・49冊目 『ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり 外伝〈3〉黄昏の竜騎士伝説編』

内容(「BOOK」データベースより)
死んだはずの父を目撃したと知らされたテュカは、父を探し北の辺境へ赴くことを決断する。半ば強制的に同行させられることになった伊丹だったが、苦手な飛龍で移動しなくてはならず、旅はのっけから波乱含み。そして案の定、北の蛮地では妙な民族争いの火種が…否応なく巻き込まれていく伊丹とテュカ。しかし伊丹の様子が何やらおかしくて―かつてないスケールの超エンタメファンタジー!竜騎士伊丹、暴虐ケンタウロスとまさかの激突!?爆発的人気のネット小説!待望のシリーズ外伝参章!

前巻末で示唆された通り、今回はテュカがヒロインとなります。
そもそも本作の1巻にて伊丹がテュカと出会ったきっかけである、炎龍襲撃の際にテュカを助けるために井戸に落とし、文字通り一矢報いた後は消息不明、おそらく死んだと思われていた父ホドリュー。
その目撃情報を元に遥か北の地に向かうことになった伊丹とテュカですが、自衛隊の航空機は燃料不足のために使用制限されているので、ジゼルから飛竜を2体だけ借り受けることに(他のメンバーは多忙のため同行できず)。
その道中で狼型モンスターに襲われていた王女シルヴィアを助けたのですが、送り届けた先のヤルン・ヴィエット王国を巡る外交のゴタゴタに巻き込まれてゆくのでした。


以下、感想箇条書き

  • 高所恐怖症を一時的に克服するための禁忌の精霊魔法やら魔薬やらで感情の揺れ幅が大きくなっている伊丹。そのせいで戦闘面での活躍は見られたけど、全体的に無理させすぎな印象。
  • テュカ危機一髪。類まれなる美貌の上に強い(精霊魔法に弓術)けど不憫なヒロインという役どころなのか。
  • ホドリューのジゴロ無双。種族を超えたところがさすが異世界。異性に対しての姿勢は違っていても伊丹のキャラクターに同類を見たというのが面白かった。
  • 女王に王女に占術使いの女首長、と女性による権謀術数の巻かと思えて、影の薄かった王配(女王の夫)が黒幕だった。あっさりやられちゃったところが最後まで情けなかったけど。
  • 敵役のケンタウロス族の長・スマグラー。その暴君ぶり(ジャイアニズム)は今までのキャラクターの中で突き抜けているけど、武人に徹しているあたりが三国志呂布を彷彿させてイマイチ憎み切れない。
  • ヤルン・ヴィエット王国の3部族(ソノート・コノート・フロート)の区別が最後までつかなかった。


今回は特に自衛隊の「じ」も出てこないくらい、まったく特地の国家・民族に限られた話でした。そこに伊丹とテュカが巻き込まれ翻弄されるというだけで。
最終的に長らく父の死の影響に縛られていたテュカが本当の意味で父から離れられたということで意味はあったと思うのですが、外伝一巻分まで使うほどだったかなぁとちょっと疑問はあります。
様々な男女観が語られてはいますが、きっと主人公・伊丹は誰ともくっつかずに微妙な距離感を保ったまま終わりそうな気がするし。
前巻の祭典が個人的には面白かったので、アルヌスの自衛隊*1およびその周辺をもっと出した方が良かった気がします。

*1:4巻で触れられるようだけど