12期・35冊目 『戦国スナイパー5 壊れた歴史を修復せよ篇』

内容(「BOOK」データベースより)

陸上自衛隊員・笠間慶一郎は宿敵・善住坊を倒した後、現代に帰還する。しかしそこは歴史が改変され、存亡の危機にさらされた別の日本だった。歴史修復のミッションを託された慶一郎は再びタイムスリップ、歴史に介入していくが、仲間が一人また一人と消されていく…。大人気『戦スナ』シリーズ、怒涛の最終章!

4巻で撃たれた拍子に現代へと戻ってしまった慶一郎、それにさくらも巻き込まれてしまいました。
すぐに病院に担ぎ込まれて治療を受けた甲斐あって慶一郎は無事回復し、復職成ったのですが、なんと同じ現代とはいえ、まったく違う様相を見せていた日本。
慶一郎が歴史に介入した結果、織田信長の守りが強化されたなどが影響して明智光秀の叛乱は不発。織田政権が続いて史実の江戸幕府とは違う近世近代を経た結果、東アジア一帯が史実以上にきな臭くなり、九州で中国系移民による暴動・テロが起こるなど、極めて治安が悪く不安定な状態となっていたのでした。*1
自衛隊ではなく”自衛軍”にて慶一郎が新たに所属することになった歴史編纂局は裏では稀に出現する”窓”を通って現代の状況を改善するために歴史の流れを修復する極秘任務。
とはいえ、運用されて間もない時間遡行による歴史操作は試行錯誤の連続で、なかなか思ったような結果は出ません。
さらに毛沢東の狙撃に行った先で妨害者の存在が明らかになった上に、局員の犠牲者も出てしまい、彼らの行く末に暗雲が立ち込める。
そんな矢先に慶一郎は戦国時代に置いてきた愛しい人・紗那のそっくりさんに出会うのですが、果たして彼女は敵か味方か?
そして明智光秀の腹心・斎藤利三の子孫である斎藤局長にはどのような秘密が隠されているのか・・・?


ついに戦国スナイパーシリーズも最終巻を迎えました。
途中で間が空いてしまいましたが、こうして最後まで読み切ることができて良かったです。
さて、もしも本能寺の変織田信長が死なかったらどうなっていたかという試みはいろいろIF小説でなされていましたが、本作では中央政権の強化と地方の反発により、幕末にあたる時期に地方雄藩の手引きで列強各国の介入が強くなり、史実のような日本としてのナショナリズムが形成されなかったことや、ロシアの南下があったりして、平成日本は平和などほど遠い暗黒の世の中が訪れている感じです。
その流れはかなりユニークではありますが、史実を知る我々からすると過酷な時代としか思えません。


そして時間遡行者である沙那の子孫との出会いと斎藤局長の陰謀を知った結果、テロリストの汚名を着せられた慶一郎は襲撃から逃れたさくらと共にすべての決着をつけるために再び信長のもとへ戻るという流れ。
戦国時代からいきなり現代に来てしまって戸惑うものの、剣道の達人として並み居る大男たちをばったばったと蹴散らすさくら。大学では助手として崩し字の文書を平然と読みこなす一方で、パソコン入力に苦労する姿が微笑ましいです。
一方で完全に敵役となった斎藤局長は”窓”の現象を解析するなど、たいそう切れる人物に見えますが、巻き添えも関係なく爆破事件を起こすなど、かなり無茶苦茶過ぎて・・・。
部下を切り捨てていった挙句にろくな奴が残らなかったこととか、その最期とか、4巻までの宿敵・武田道有と比べると、やや小悪党臭さがありました。


オチはなんとか収まって、ハッピーエンドで良かったと言えるでしょう。
果たして総理大臣織田信長となるのか。慶一郎と沙那、さくらとの三角関係はどうなるのか、といった点は気になりますけどね(笑)

*1:移民や難民を大量に受け入れた欧州国家がモデルだろうか