- 作者: 横山信義
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/12
- メディア: 新書
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実は新作タイトルが『巡洋戦艦「浅間」』というのは事前に某所で知っていたので、単発物かと思っていたのですよ。
斬新な架空世界の設定よりも、戦闘を中心とする現場のシーンの記述に定評ある横山信義氏のことですから。『列日』や『虎口の海』のような話も有りえるかと予想していました。
3冊刊行を予定されているということなんで、上中下で終わるか、いつもとは違う時代設定での本格長編となるのか、1冊だけではちょっと判断しかねるところがあります。
【以下、ネタばれ含む】
「浅間」の正体はドイツのシャルンホルスト*1なわけですが、今作ではヨーロッパ連合と日本が同盟を組んでアメリカをやっつけようという話なんで、潜水艦専門の海軍になってしまったドイツより、日本に持ってきて機動部隊の護衛や基地砲撃など色々活躍させてやろうという目論見が見えます。
実際、史実でほとんど活躍の場面が無かった長門級や大和級より、装甲が弱くとも速度が出せた金剛級の方が使い勝手が良かったのもありますし、その役どころをストーリーの中で強調させるのでしょうね。
今回、いつもの横山氏らしからぬ点
- 表紙オビによると、3ヶ月連続刊行!とのこと。
今までは、ある程度期間をおいてコンスタントに出していました。2ヶ月間隔でもちゃんと出しているのもすごいな、と思っていましたが、大丈夫なんでしょうか。*2 それとも以前から書き溜めておいた?
- タイトルに艦名を持ってきたところ。
今までのシリーズでも特別扱いな艦はありました*3が、どんなに強くて丈夫でもたった一艦が戦争中出ずっぱりは無理ですからね。大型艦は特にメンテナンスや人員補充に時間かかりそうです。今回の戦いで中破判定を受けた浅間は次巻で出番はあるのでしょうか・・・。*4
- 開戦直前のエピローグから、本編の舞台はいきなり飛んで昭和20年!
最初、誤植かと思ってしまった。
今までのシリーズでは、開戦当初から書き、途中または最後を略すことが多かったですからね。もしかしたら「蒼海の尖兵」の対アメリカ版になるのを避けようとしたのか・・・。
ちなみにいつもの横山氏らしい点
- 世界概況は不明な点が多い。
わかるのは、ヨーロッパは仲良しらしい。ロシアは技術供与をするぐらい日欧に好意的な中立。ところで中国大陸はどーなっている?(やっぱ国共内戦かな)
最後の方でとってつけたような会話があります。悪役アメリカの黒幕は某伍長閣下のようですな。そうですか。まぁ本国には置いておけないものな・・・。
- やっぱりつおいアメリカ軍。
すでに大量の人員と資材を消耗して守勢にまわったらしいですけど。
まぁ客観的に見ても、第二次世界大戦にて戦時体制に入ったアメリカは最強ですからね。でもP51はマーリン・エンジンがもらえないので可哀想。たぶん登場は今回だけでしょう。
それにしても、日欧同盟はどうやって戦局を挽回してのだろう?
- 砲口径の大きさより、手数の多さが優位。ブルックリン級軽巡強し。
いきなり浅間のライバル扱いです。
ヨーロッパでは、フランスの旧式戦艦が戦闘不能にされたらしいですが、エスコート艦はどーしていたのか?
「浅間」以外に見せ場と言えば、日本版モスキートおよび他の作品とは一風変わった烈風が出てくる航空機の戦い。そして新技術によって生まれ変わった甲標的ですね。
本作で一番良かったのが、甲標的の乗組員の地道な努力が実ってパナマのガトゥン閘門が破壊されるシーンでした。
次は来月ですが、間隔が近いと前のストーリーを憶えていられるのが良いです。その代わり質が落ちないことを祈っています・・・。