10期・52冊目 『ブルータスの心臓』

ブルータスの心臓―完全犯罪殺人リレー (光文社文庫)

ブルータスの心臓―完全犯罪殺人リレー (光文社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
産業機器メーカーで人工知能ロボットの開発を手がける末永拓也。将来を嘱望される彼は、オーナーの末娘・星子の婿養子候補になるが、恋人・康子の妊娠を知り、困惑する。そんな矢先、星子の腹違いの兄・直樹から、同僚の橋本とともに、共同で康子を殺害する計画を打ち明けられ…。大阪・名古屋・東京を結ぶ完全犯罪殺人リレーがスタートした。傑作長編推理。

主人公・末永拓也は貧乏で父から虐待を受けた悲惨な過去から抜け出し、周囲を見返すために著しい上昇志向があり、かつ優秀なために産業機器メーカーで人工知能ロボットの開発を手がけるエリートとして将来を嘱望されていました。
そんな彼がオーナー一族に近づくために接近した秘書の康子と関係を持ってしまうのですが、後日めでたくオーナーの末娘・星子の婿養子候補となった際に康子の存在が邪魔になったというわけです。
そこで康子が妊娠し生むつもりだと告白したために窮地に追い込まれた拓也。公になる前にその関係を清算しなければならなくなるという比較的ベタな展開。
しかし康子と関係を持っていたのが拓也だけでなく星子の腹違いの兄・仁科直樹に同僚・橋本も含めた3名であり、その始末を互いのアリバイ工作を含めて協力して行うことになったというのが特徴ですね。
そして当日、完全犯罪とすべく大阪から東京まで死体のリレーを行ったのですが、毛布に包まれていた死体が康子ではなく仁科直樹だったことが判明。
さらに共犯者である橋本が毒殺されたことにより、状況は混とんとしていくのでした。


警察の捜査は難航するのですが、佐山刑事は独特の視点で苦心惨憺の末に真相に近づきます。
そしてラストでは脇役とみられた人物が第四の男として登場。プロローグの事故死に絡めて様々な謎が明かされるという展開なのですが、ちょっと曖昧なままで幕を閉じました。
ベタな内容かと思われたが、殺人リレーのすり替わりを含めて最後まで謎に包まれた硬派な展開で読ませましたね。
まぁ利己的な人物ばかりであまり感情移入できませんでしたが。
タイトルからしてやっぱり疑惑と裏切りがテーマになっているようで仕方ないのかもしれませんが。