6期・15冊目 『擾乱の海5 終局のレイテ』

擾乱の海5 (歴史群像新書)

擾乱の海5 (歴史群像新書)

内容紹介
前巻・・・総力をあげて米軍の二正面攻撃を迎え撃つ日本軍。新鋭空母「大鳳」を擁する第一機動艦隊はマリアナへ進撃し、二式大艇による索敵線にはマリアナに向かう米艦隊が……。マリアナ諸島をめぐり、日米の総力を結集した海空の大決戦がここに火蓋を切る!

前巻がマリアナ海戦を(日本にとって)まともに戦わせたのだとしたら、こちらはレイテ海戦となるのは予想通り。
米空母部隊の奇襲によってルソン島の航空基地が壊滅。随伴空母も無くエアカバーが得られなくなった日本の大和級長門級を始めとする水上打撃部隊はなんとか敵機の空襲を逃れつつ(通信途絶のため、航路を工夫することにより空襲のリスクが減ることが過去の戦訓にあり)、レイテ上陸後の米軍の殲滅を企図して南下。それを防がんとする旧式米軍戦艦部隊。


大筋でレイテ海戦を再現させつつ、日本軍が苦闘しながら勝つ*1という展開に著者の好みが色濃く反映されていますね。そのためにいくつか首をかしげる部分が無くはないですが。*2
今回も中口径多数の珍艦が大暴れ。それに対して日本軍は重雷装艦がいいところで見せ場を作ったり(珍しく魚雷発射管に命中・轟沈が無かった)。
米軍の戦艦は善戦しつつもやっぱり大和級は硬かった。締めは照射砲撃でとどめを刺します。


個々の戦闘描写としてはやはり読ませるものがあります。でも全体的にパターンで先が読めてしまうのは仕方ないか。
そして最後はレイテの米軍を降伏させる→休戦という荒業を見せて、あっさりとした幕切れでした。そりゃあこの不思議な現象において、欧州や中ソでは混沌とした情勢が続く中、広範囲な太平洋の戦いは行いたくないのが本音でしょう*3
しかしせっかくのSF的設定も横山信義氏が書くとわりと今までのシリーズと変化無いなぁというのが実感です。ええ、そうなるであろうことは予想できていましたけど。

*1:西村祥治提督が戦艦山城・扶桑を率いて壮烈な戦死を遂げるというのはあえて同じにしたのだと思う

*2:いくら両面作戦とはいえ、艦船に対する航空機の優位が確立された世界で日本側が軽空母の一隻も伴わないのは不自然

*3:だったら最初から休戦に動けよ!でもそうすると1巻で終わるか・・・。