6期・16冊目 『時空の旭日旗3』

時空の旭日旗 3 (歴史群像新書)

時空の旭日旗 3 (歴史群像新書)

内容(「BOOK」データベースより)
二式邀撃戦闘機「飛鸞」・九七式歩兵戦闘車…「未来情報」による新兵器で強化した日本軍に、米英蘭豪艦隊ABDAが立ちふさがる!?マレー半島大激戦。超時空シミュレーション戦記。

フィリピン方面では日本軍の総力をあげた攻撃によって勝利に終わり、お次はマレー・インドネシア方面での攻防に移りました。
今回はシンガポール攻防に始まり、史実とは逆方向でマレー半島を日本軍が攻めていきます。インド方面の援軍に加え縦深陣地を築いたイギリス軍に対して、まるで大戦後半のアメリカ軍のような空陸海一体となった立体的な攻撃を見せる日本軍。A(あずみ丸)情報は戦術上でも活かされているわけです。とここまでは比較的順調に進んだのですが、蘭印方面の攻略に向かったところでABDA艦隊はじめ連合軍による必死の反撃によってその攻勢は頓挫してしまうのです。日本軍としては装備も戦術も改良されているはずですが、敵も強化されている感じ。未来の知識があっても、思い通りにならないのは当然とも言えます。


そういえば、専守防衛をうたいながらも結局は史実と同じようにそっち(東南アジア)にいくのか(消費量増加により、大陸の油田では足りなくなった石油の確保とか、仏印・マレー方面の強力な連合軍の排除とかいろいろ理由はあるけど)、太平洋方面の米軍は後方支援ばっかりで何しているんだかいろいろ思ったのですが、そこは意外な展開が待っていました。
陸海での敗退があっても豊富な航空戦力によって日本軍拠点の壊滅を目指す連合軍。戦力をかき集めて必死の防戦の日本陸海軍。
実はそれもある作戦のための罠であったわけですが、結果的に双方にとって意外(片方にとっては天佑、片方にとっては悪夢)な遭遇戦として展開していったのが面白かったです。あれはある意味ミッドウェイ海戦を裏返しにしているのだろうかと勝手に推測。


といった感じで日本は情報的な優位と限られた兵力の集中運用によって史実とは違うかたちでの攻勢をかけ、連合軍はあの手この手でそれを覆そうという駆け引きな面がうまく描写されていると思いますね。非常にテンポが速くて一つ一つの戦いがあっという間に過ぎていってしまい、もう少し詳しく読ませてくれてもいいような場面がいくつかありましたが。とりあえず今回気になったは酸素魚雷強すぎ。*1それと空対空ロケット弾大活躍。兵器というのはカタログスペック通り発揮するとは限らない気がしますけどね・・・。

*1:田中頼三"redoubtable Tanaka"率いる二水戦の活躍を書きたかったのだろー(笑)