- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2007/04/01
- メディア: 文庫
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内容(「BOOK」データベースより)
都下郊外の大型商業施設において重大死傷事故が発生した。死者69名、負傷者116名、未だ原因を特定できず―多数の被害者、目撃者が招喚されるが、ことごとく食い違う証言。防犯ビデオに写っていたのは何か?異臭は?ぬいぐるみを引きずりながら歩く少女の存在は?そもそも、本当に事故なのか?Q&Aだけで進行する著者の真骨頂。
何が原因でどのような災害が起こったかということは明らかにされず、ひたすらQ&A形式で事故に関わった人々の当時とその後の状況を書き出していく。パニック小説としては異色作とも言えましょう。
パニック小説というのはいわゆる神の視点から広い範囲の状況描写が多いのですが、本作は個人にじっくり焦点を当てているだけにひとりひとりの行動・心理に関してはかなり事細かに描かれていますね。
ただ、あくまでも個人の主観でしか災害の様子はうかがえません。それでも様々な立場から書かれている上に、順番も関連づけられるように展開されるので、一体何があったのかという読者の興味をそそる巧い構成ですね。*1
そしてごく普通に思えた人々の会話からふと覗かせる歪んだ心理が怖いのが特徴でもあります。
後半は災害事故そのものより、それをネタにしよう(している)とする人の話ばかりになってしまったのがやや残念。それはそれでこの手の事故にはつきものなのかもしれませんが、教祖に祭り上げられた女の子のエピソードは蛇足じゃないでしょうかね。
*1:もっともその期待が報われることはあまり無いのだけど