9期・78冊目 『生き埋め SLIDE』

生き埋め―長編パニック小説 (1977年) (サンケイノベルス)

生き埋め―長編パニック小説 (1977年) (サンケイノベルス)

2週間以上の長雨が続くカリフォルニアでは植物が育たず人々の心も荒れて、自殺や犯罪が急増していました。
海岸の崖沿いに立つ大規模スーパーのシーサイドマーケットは天候不順にも関わらず大勢の客で賑わっていましたが、突如として駐車場に地割れが走り、地盤が広範囲に崩落したことにより店全体が地中に落下してしまいました。*1
その時点で多くの死傷者が出た上に自動的にシャッターが降りて自力での脱出はできない状態。
警察と消防による懸命の救助活動が開始されましたが、その真っ最中に今度は近くの丘から大規模な土砂崩れが襲い、現場にいた人々は例外なく飲み込まれて辺り一面を泥で覆い隠してしまったのです。
スーパーマーケットの中にも泥は容赦なく入り込んで、救助隊を始めとして多数の人々を飲み込み、運良く陳列棚の上に避難できた14名のみが生き残っていました。
しかし警察や消防が全滅したこともあって地上からの救助の術もなく、実質見放された中で生き埋めにされた人々は脱出することができるのか?
そして途中でハイウェイでの事故現場に駆り出されたことで九死に一生を得たドッド警部は独自にスーパーへの接近を試みるのですが・・・。


長雨や集中豪雨による土砂崩れが発生して建物ごと生き埋めになるのは日本でもよく聞く災害です。
それが大規模スーパーが丸ごと崩れた地中に落ち、更に上から大量の土砂が流れ込んで閉じ込められてしまう。
その迫力ある筆致もさることながら、かなり悲惨な状況であることがわかります。
落下した衝撃で店内はぐちゃぐちゃ、唯一の安全地帯は陳列棚の上のみ。
店内に流れ込む泥は増え続け、迂闊に下に落ちると飲み込まれて命を落とすことに。
そこで生き残った人々はこのまま助けを待っているわけにはいかないと協力して奮闘するさまが見ものです(非協力的だったり不安要素となる人物もいたりするわけですが)。
最初スーパーマーケットを舞台にしたパニック小説と知って、少なくとも食料はふんだんにあるのだから、長期戦として中の人たちの協力や争いといった人間関係がメインと想像していましたが、泥流との闘いをスリリングに描いていて良い意味で裏切られましたね。


組織的な救助が諦められても、一人執念を見せるドッド警部の活躍*2も見逃せないし、最後に外と中の努力が結びついたのは感動的でした。
局地的パニックを描いた割にはかなり迫力あるシーンの連続で、映像が目に浮かぶよう。
出版自体は古いけど、最後の手段も含めて斬新な内容でしたね。

*1:消防車のはしごが届かないことからかなりの深さ

*2:ヘリの操縦手もかなり活躍するけど