- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2009/06/26
- メディア: 文庫
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出版社 / 著者からの内容紹介
あと3年で世界が終わるなら、何をしますか。
2xxx年。「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」と発表されて5年後。犯罪がはびこり、秩序は崩壊した混乱の中、仙台市北部の団地に住む人々は、いかにそれぞれの人生を送るのか? 傑作連作短編集。
いわゆるパニック小説はよく読んできましたが、異変に翻弄される普通の人々にのみ焦点を当てた小説というのは珍しくて、いざ自分の身に起こったらどうするかという点ではかなり興味深い作品です。
ただ「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」と発表された後の大混乱は過去のものとされており、人々が立ち直って(というか疲れて)平穏な暮らしを取り戻した設定となっているのでパニック小説の設定を借りた人間の生き方を描いた作品と言えましょうか。
もっとも、経済活動がほぼ停止し物品は入手しづらくなり、変にギラギラと燃えている警察官や相変わらずデマがはびこっているあたりは治安の良かった日本がすっかり政情不安な国に変わってしまったことを思わせます。
舞台となるのは仙台市郊外の団地であり、異変発表後の大混乱により様々なかたちで家族や周囲が変わってしまった人ばかり。そんな中で残された日々を過ごす彼(彼女)らの生活を描いた連作短編というかたちを取っていますが、前の章の主人公のその後が次の章で触れられたりしたのが面白かったです。
実際にそんな体験をしたわけじゃないのでよくわからないのですが、あと3年(物語開始時点)で世の中が終わると信じられている中、平静でいられる人が多かったのが意外と多いのですけど結構そんなものかな。特に女性の方が精神的にタフに生きています。きっと現実もそうなんだろうなぁ(笑)まぁ当初の混乱を生き抜いた人ばかりなので不思議じゃないのでしょう。
心情として書かれていますが、あと数日後の命と言われれば誰しも平静ではいられずに慌てるのだろうけど、数年後と言われると現実的に思えないというか、その間どうしよう?となるのでしょう。
例えば、「冬眠のガール」や「演劇のオール」の女性主人公が起こした行動*1は、終末世界ならではということもあってか不思議な面白さを感じさせる章です。
「太陽のシール」や「深海のポール」のような家族の暖かさを感じられる章*2もとても印象に残るラストで良かったですね。