4期・44,45冊目 『日本沈没 第二部 (上下巻)』

日本沈没 第二部〈上〉 (小学館文庫)

日本沈没 第二部〈上〉 (小学館文庫)

日本沈没 第二部〈下〉 (小学館文庫)

日本沈没 第二部〈下〉 (小学館文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
海底に眠る「日本」の遺跡が慰霊祭で映し出される。日本列島が海の底に沈んでから二十五年がすぎていた―。国土を失った日本人は、パプアニューギニアカザフスタンなど世界各地に入植していたが、現地の人々との軋轢もまた厳然と存在していた。一方、中田首相を中心とした日本政府の研究グループは国の復興のために、あるプロジェクトを密かに進めていた。旧日本海上に広大な人工島を建造する計画―だがそれは中国や北朝鮮など、周辺国との利害対立を生むものだった。四〇〇万部ベストセラーの刊行から三十三年の時を経て、ついに描かれた衝撃の続編。

日本沈没』を久しぶりに読み直したのが2年前(http://d.hatena.ne.jp/goldwell/20070516/1179323078)。谷甲州との共著で第二部が刊行されたのはその頃知ったのですけど、第一部の評価が高かっただけに続編はどうなんかなぁ*1と少し危惧もあって、とりあえず文庫待ちにしました。
でも、すぐに読んでも良かったくらい読み応えある内容でしたね。


日本列島を襲った異変から25年後。列島から脱出した日本人は世界各地に散らばって入植し、かつての日本を知る世代は高齢化。異変後に生まれた、あるいは異変時には幼かった第二世代が成人を迎えていた時代。
パプアニューギニアカザフスタンにおける日本人コミュニティの現状*2や沈没後の日本列島所在地を取り巻く周辺国の思惑など、かつてない困難に遭遇する日本人の状況を描いているのが前編となっています。
そして日本の切り札とも言える地球シミュレータとメガフロート計画が同時に世界各国との軋轢を生み、進行する世界規模の異常気象とあいまってナショナリズムとコスモポリタニズムの狭間で揺れる日本人の行く末を描く後編。


執筆者としてアジアでの滞在経験の長い谷甲州が選ばれただけあり、小松左京のダイナミックさには届かないものの、元来技術テーマとリアリティを重視するその内容は丹念な取材・調査とあいまって申し分ないです。特にカザフスタンの厳しく異様な自然環境の描写は真に迫るものがありまたね。
その分、初めてこの人の著作を読む人には感情の起伏が乏しく感じる部分があるかもしれませんが、各エピソードは決して飽きさせるものではないし、抑え気味ながらも最後の小野寺と玲子の出会いは、まさにラストにふさわしいシーンです。
ちなみに第一部の主役である小野寺俊夫と阿部玲子の異変後25年間の経緯は、ちょうど第二部が刊行された時期よりビッグコミックスピリッツで連載されていた漫画版(一色登希彦版)の設定を意識しているかなと思ったり。*3


第一部から受け継がれている日本人への深い洞察というテーマは、国土を失って世界各地と散らばった第二部となって更に強調されている感じがします。
そこはやや似た歴史的経緯を持つユダヤ人との比較がなされていますが、大規模な気候異変が迫っているのが大いに違うところ。
そして、軍事衝突の危機やら政変やらいろいろあるわけですが、最後は日本人がコスモポリタニズムへまとめ役、そして宇宙への進出という希望の持てる終わり方で締めくくってくれたのが嬉しいです。

*1:谷甲州という作家の堅実な筆力は知っていたものの

*2:それは多くの日本人がテレビでしか見たことがないアジア・アフリカの難民の姿とダブる

*3:小野寺が記憶喪失後に小野田と呼ばれて難民グループのリーダーになったり摩耶子(漫画では麻耶子)という女性と結婚していたり