4期・47冊目 『タイムスリップ大戦争』

タイムスリップ大戦争 (角川文庫 緑 377-17)

タイムスリップ大戦争 (角川文庫 緑 377-17)

特殊な地震(時震)の影響で19XX年(内容からして70年代後半)の日本列島がまるごと1941年の世界にタイムスリップしてしまうというストーリー。発表された70年代後半では斬新なアイデアだったでしょうが、架空戦記ブームを経た今となっては珍しくもないと言えましょう。*1しかしSFと歴史を融合させた傑作を多数世に出している著者だけあって、ひねりやオチ*2も効いていて今読んでも充分面白く感じる内容です。


前に読んだ『パラレルワールド大戦争』と同様、19XX年日本とタイムスリップ先の世界の予期せぬ出会いはいたってコミカルに描かれている上に、違う時代に生きていたはずの日本人同士*3がなんだかんだでうまく馴染んでいってしまうさまが面白い。
過去の世界であることが判明しても平和と協調を求めたはずの日本が心ならずも戦争に巻き込まれていくのですが、19XX年の技術と知識を駆使して進めていったら史実の裏返しになってしまうのがみどころ。
まぁ細かく言えば首をかしげてしまうところもあることはあるんですが、それが気にならないくらいテンポ良く読めてしまうのがいいですね。


タイムスリップが一度で終わらず続くのがこの作品の最大の特徴なのですが、19XX年の生活を維持するには例え周りがどうであろうと資源輸入が欠かせないのが日本のつらいところ。三十数年前ならばともかく、もっともっと前の時代に遡ってしまったら・・・?
そう考えるといいことばかりでは無いようで。

*1:実際に類似アイデア架空戦記があった

*2:ネタばれすれば、時間軸での「日本沈没」とも言える

*3:関東軍を始めとして当時海外に出ていた日本人が