2期・52冊目 『1984年』

1984年 (ハヤカワ文庫 NV 8)

1984年 (ハヤカワ文庫 NV 8)

あらすじはこちら。
ウィキペディア・1984年(小説)
冷戦が崩壊して久しい21世紀の今日に、1948年に書かれた、まるでスターリン時代のソ連を連想させるディストピア(反ユートピア)小説を読むというのが、なかなか微妙ですね。書いた時代を思えばよくぞここまでの世界設定を創ったものだと驚きます。


公私にわたって監視されて息の抜けない生活、うんざりするほどの統制と窮乏を強いられる主人公の様を読んで鬱な気分になるのですが、全体主義国家に生まれなくて良かったという単純な感想で終わらないところがこの作品の複雑なところ。
国家(党)にとって都合のいいような歴史の改竄・大衆娯楽の操作・システムによる個人の管理など、現代にも通じる風刺箇所がいくつも見られます。誇張はされているけど、小説だからって笑えないですよね。


内容が内容だけに読んでいて重苦しく感じ、なかなかページが進まなかったのは正直なところ。体制に疑問を持ち、ささやかな抵抗を起した主人公がどうなるのかがすごく気になっていたのですが、その結末には何とも言えない虚無感を抱きました。