11期・49冊目 『青天の霹靂』

青天の霹靂 (幻冬舎文庫)

青天の霹靂 (幻冬舎文庫)

内容紹介

学歴もなければ、金もなく、恋人もいない35歳の晴夫。一流マジシャンを目指したはずが、17年間場末のマジックバーから抜け出すことができない。そんなある日、テレビ番組のオーディションではじめて将来への希望を抱く。だが、警察からの思いもかけない電話で、晴夫の運命が、突如、大きく舵を切る――。人生の奇跡を瑞々しく描く長編小説。

貧乏な父子家庭の生活に嫌気が差して高校卒業と共に家を飛び出した轟晴夫は場末のマジックバーのマジシャンとして働き始めて17年。
喋りがあまりうまくないこともあって、いまいちぱっとせず、テレビ出演を決めて売れっ子となった後輩を妬み、悶々とする。
そんな状況を打破しようと、新たなネタを考えてテレビ番組のオーディションを受けます。
見事に受けて、無事通りそうな感触を掴んで結果を連絡を待っていた夜、突如家を出て以来音信不通だった父の死の連絡を受けて・・・。


タイムトラベル小説としては定番とも言える、自身が生まれた頃に時を遡り、若き頃の両親に出会うといった内容です。
いわゆる芸能人が書いた小説というのはまず手に取る機会は無かったのですが、元々興味あるタイムトラベルが取り上げられていることと、amazonの評価がまずます良かったので読んでみました。


導入部分での優しい父にマジックを教わった子供時代のエピソード、貧しくて頼りない父を嫌うようになった反抗期と家を出たこと、安いアパートでの一人寂しく夢も希望もない鬱屈した現在の主人公の状況がよく伝わってきます。
メインとしてはタイムスリップした先での出会いを通して知る事実。
決して目新しい展開ではないのですが、自分が生まれる間際の事情を目のあたりにして、両親たちがどんな思いでいたか、どれだけ自分が勝手な思い込みをしていたかと思い知る、感動的なストーリーに仕上がっています。
タイムスリップものならではの、未来を知ることを活かしての活躍や、思わぬところで現在とリンクする人物が出てきたりと楽しめますね。
贅沢を言えば、35年前ならではの時代風景やギャップがもっと書かれていれば良かったと思います。主人公がいきなりマジックを披露する浅草の演劇場・雷門ホール内の描写が良かっただけに。