道造 『貞操逆転世界の童貞辺境領主騎士3』

現代日本から男女の貞操観念が真逆の異世界へ転生し、その世界では珍しい男騎士となった辺境領主ファウスト
隣国ヴィレンドルフとの和平交渉という大役を果たした彼のため、リーゼンロッテ女王はその功績に見合う「嫁」を決定する。
一方ファウストは、ヴィレンドルフで得た「遊牧騎馬民族国家」の情報に、前世の知識で「モンゴル帝国」を知るが故に危機感を抱く。
しかしいくら言葉を尽くそうとも仮想モンゴルの常識外の脅威は誰にも理解されず、ファウストは王国を動かすためにある「禁忌」を犯す覚悟を決め……!?
貞操が逆転した世界で“誉れ”を貫く男騎士の英雄戦記、衝撃の第三幕!!

男女の立場が逆転した世界。主人公ファウストはモテモテ(全体というより、彼をよく知る女性たちから)なのですが、本人はまったく自覚なく。登場人物は女性ばかりなのに、恋愛要素は少ない。むしろ骨太の戦記3巻です。

前巻にてファウストはヴィレンドルフとの和平交渉という大役を果たしました。
一辺境領主としては大きすぎる功をあげたわけで、御恩と奉公で成立している中世封建国家としては、ファウストにふさわしい褒章を与えざるを得ません。今までは金銭で報いてきましたが、騎士に対する以上は大きな名誉がふさわしい。
そこで王家の次女たるヴァリエールが臣籍に降りて、ファウストと結婚するという流れになりました。
もっとも、次期君主たるアナスタシア、その第一の側近たるアスターテ公の愛人になるのが彼女たちの中で内定していて、童貞を狙われているようですが(笑)

ファウストファウストで、女王との接見を前にして、ある覚悟を決めていました。
それはヴィレンドルフに赴いた際に知ってしまった。モンゴルの脅威。
前世ではただの歴史知識でありましたが、領主である今は違う。いわば大災害をテレビで見るのと、被災地の一首長として立ち向かう。当事者としての立場なんですよね。
世界線は違っても、地理的に近い未来に訪れるであろうと確信したファウストは悩みます。ただ脅威を訴えても信じてもらえない。
そこでゲッシュという神への誓いをもって覚悟を知らしめるしかないと決意するのでした。ただ、破れれば自死しなければいけない禁忌ゆえに反対されるのを覚悟して。

今回も各キャラクターが生き生きとして描かれていましたし、硬軟のバランスが良くて非常に良かったです。自らの命を賭けたファウストが恰好よすぎます。
ついにファウストの嫁が決定。本来は感動というか微笑ましいはずが、最後はシモの話題で笑っちゃいましたね。女性ばかりの他の貴族たちが気になるのは仕方ない(笑)
いろんな意味で作中の2,3年後あたりが気になってしまいます。
辺境領主たる主人公ファウストにとって、何が心の拠り所か。何のために生きようとしているのか。そこがぶれずにしっかり書かれているのが行動に納得できる部分であります。