横山信義 『高速戦艦「赤城」2-「赤城」初陣』

戦艦の建造を断念し航空主兵主義に転じた連合艦隊は、辛くも米戦艦の撃退に成功した。しかし、アジア艦隊撃滅には至らず、また米極東陸軍はバターン半島コレヒドール要塞において死守の構えを見せている。
資源の多くを輸入に頼る日本としては、フィリピンを抑え南シナ海制海権を握り通商路を再開させねばならなかった。
ついに、アジア艦隊殲滅のための新鋭空母を加えた機動部隊に出撃命令が下される。しかし、米太平洋艦隊もアジア艦隊を援護するべく機動部隊を繰り出すのであった。

「太平洋艦隊が来れば、日本軍などすぐにでもルソンから叩き出せる。それまでは、何としてもバターン、コレヒドールを守り抜く」
「アジア艦隊がミンダナオ島にいるとの断定は、現時点ではできない。だが、彼らがフィリピンのどこか、それも中部以南に潜んでいることは確かだ。問題は、彼らが今後、どのように動くかだ」

航空主兵主義に戦略転換した日本と、国力に物を言わせた大艦巨砲主義をひた走るアメリカが開戦したシリーズの第二巻。
史実と違って欧州国家は平穏そのもので、戦っているのは日米のみという状況です。
初戦はフィリピン海域にて日本海軍が勝利を収めました。とはいえ、完全に航空主兵を実証したわけではなく、戦力を過信した米軍の油断と日本軍の巧妙さが勝敗を分けた印象です。
南方からの資源を得るため、一刻も早く南シナ海制海権を握りたい日本軍は着々とルソン島の攻略を進めます。上陸した陸軍はバターン半島コレヒドール要塞に籠城した米極東陸軍との戦いが始まりました。

一方で未だ戦艦を始めとした戦力を保っているとはいえ、本拠地を脱した米アジア艦隊は孤立し、修理もままならない状況。
そこでトラック島に進出した太平洋艦隊が救出作戦を開始します。
日本軍とて、むざむざ逃すわけにはいかないので、翔鶴級を加えた機動部隊が出撃します。そこに日本海軍が最後に建造した戦艦「赤城」が加わっていたのでした。

受け身で始まった戦争ですので、史実のような快進撃とはならず。かといって航空主兵の強みはまだ完全に生かされず(機体性能とか戦術とかいろいろあって)。日本軍はなんとか勝ちを収められている状況です。実に著者らしい。
とにかく資源のほとんどを輸入に頼る日本にとっては南方資源地帯との通商路が命綱。アジア艦隊を撃破し、ルソン島周辺の制空権制海権を手中することによって、ようやく一息つけるというわけです。

今回はハルゼー率いる空母主体の任務部隊が出撃して、アジア艦隊撤退の邪魔になるパラオ諸島の基地を空襲。それをきっかけ機動部隊同士の対決が描かれました。
ここでも機体性能や空母の数から日本軍が勝利を収めます。
ただし、日本軍も損害が出ているわけで、勝ちすぎていないさじ加減が今後の米軍の戦力にどういった影響が出るかですね。大艦巨砲主義は根強いようですので、航空主兵に切り替えるのかどうかは疑問。戦艦主力・空母は補助でいきそうな気がします。
それでもアメリカの国力を考えたら、どっちの数もあっさり日本を上回ることができるから化け物国家ですよね。