最近観たアニメ・映画(『あの花』/『アイアムアヒーロー』

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。
『あの花』と略されていたこともあり、正確なタイトルをなかなか覚えられなかったこのアニメ。公開から10年経っていたんですね。
秩父市が舞台になっていることと、めんま本間芽衣子)・あなる(安城鳴子)だけはネットで見て知っていました。
たまに秩父鉄道に乗って秩父方面に行くこともあったので、ポスターを目にして認識はしていたのですが、この度初めて観ることになりました。

子供の頃は超平和バスターズを名乗り、仲良しだった6人組が高校1年生となって、それぞれバラバラになっているという状況から始まります。バラバラになったきっかけはマスコット的な存在だっためんまが死んだこと。
主人公・じんたん(宿海仁太)の現在が対人恐怖症気味の不登校。かなり閉塞的なので前半はもどかしい印象がありました。
突然、幽霊として現れためんまは死んだ当時の精神のままのために明るく無邪気で、再会したぽっぽ(久川鉄道)も昔と変わらぬ親しさ。めんまを成仏さえるため、2人に引っ張られるようにじんたんが行動を起こすところが良かったです。
あなるも同じ学校に入ったじんたんのことを気にかけているのはわかるんだけど、男女の差というか、なかなか伝われないですね。ギャルっぽい雰囲気なんですけど、本当は初心(うぶ)なところが可愛い。つるこ(鶴見知利子)曰く「人に流されやすい」あたりはずっと変わらないようです。
ゆきあつ(松雪集)はつるこが評したように性格が歪んでいて、すっかり嫌な奴になっていましたねぇ。
もっともじんたんだけでなく、誰もがめんまを亡くした過去に囚われていて*1、それはめんまの家族も同じ。じんたん以外に見えない幽霊のめんまを願いを叶え(成仏させ)ようと奔走することで物語は盛り上がっていきます。

花火の打ち上げシーンもなかなかですが、見どころは日記帳や蒸しパン*2を通じて、5人がめんまの存在を受け入れるところですかね。
花火の打ち上げ費用捻出を通じて、5人が徐々に打ち解けていき、昔の呼び方に戻っていくところ。「あなる」だけは可哀そうだけど(笑)
そして、もちろんラストのかくれんぼですね。
作中を通じてじんたんの亡き母親が大きな役割を果たしていたことに気づきます。
復学したじんたんとあなる。ゆきあつとつるこの関係。働きながら高認試験勉強をはじめたぽっぽ。5人のこれからが気になった私はこの物語の魅力に囚われてしまったようです。
だから続けて劇場版も見てしまいました。
劇場版は1年後の夏が舞台となっていて、めんまへの手紙を書くところから始まっています。
手紙を通じてそれぞれの思いが本編の場面を混ぜながら描かれます。新たに子供の頃の様子。特に外国人の容姿のためにクラスに打ち解けられなかっためんまにじんたんが声をかけ、仲間になるきっかけが描かれたのが良かったです。
単なるダイジェスト版とならず、本編に感動した人にとってはより深く楽しめる内容となっていたと思います。



アイアムアヒーロー
ビッグコミックスピリッツ』にて2009年から2017年まで掲載されていた漫画が映画化されたものです。
私自身、かつては毎週楽しみに読んでいました。途中で雑誌を買うのをやめてしまったので、最後はネカフェでまとめて読んだ覚えがあります。
漫画原作の実写映画化となると、設定や展開が変わりすぎて期待外れとなるパターンが多いのですが、こちらは評価コメントを見たら意外と高評価でした。
いわゆるゾンビパニックもの。噛みつき事件をきっかけに爆発的に食人鬼が発生。あちこちで恐ろしい姿に変貌して人間に噛みつく。噛みつかれた人は短時間*3で動き出し、また人に噛みつくことで爆発的に広がっていく。そんな恐ろしい光景が繰り広げられ、ネット上でもZQNとして話題になっていきます。
ZQNは人間としてのリミッターが外れたようで、力が強く動きも早い。手足を失っても動き、獲物に襲い掛かる。音に大きく反応。獲物が近くにいない場合は生前の日常的な言動を繰り返す。*4頭部を破壊しないと動きを止めないという厄介な存在です。

主人公・鈴木英雄(35)は漫画家ではあるのですが、デビュー作が早々に打ち切られて今はアシスタントで食いつないでいる生活。同年代の恋人てつことアパートで暮らしています。
英雄は再び雑誌掲載を目指して執筆を続けていますが、雑誌編集者には相手にされません。クレー射撃が趣味で自宅にライフルを保管しています。
ある晩、漫画家として一向に芽が出ないことに癇癪を起こしたてつこによって、ライフルごと外に追い出されてしまい、公園で過ごします。その間、世間は大きく動いていたことに気づかずに。

わりとくどい描写(そこが良いところではあるけれど)の原作と違い、映画ではZQNが蔓延してからの展開は早かったです。
特に世間がZQNをはっきりと認識できていない段階で街中がパニックとなっていくのが映画ならではの見どころ。平日ということもあって、通勤通学で外に出ていたらまず生き残れませんよ。
逃げ惑う英雄はたまたま停車していたタクシーに乗って逃げる際にヒロインの比呂美と出会います。
乗り合わせた男性→運転手が感染した中、危機一髪を乗り越え生き残った2人はネットで富士山に行けば感染せず安全だという情報を鵜呑みにして徒歩で向かいます。
実は比呂美は赤ん坊に噛まれていたことで感染してしまうも、襲いかかってくることなく、逆にZQNに襲われた英雄を助けてくれるのでした。
女子高生と2人きりでも変な気を起こさず、買ってあったパンを分けたり、半感染した彼女を見捨てず連れていく英雄の人の好さが出ています。
途中で立ち寄ったアウトレットモールでは、生き残った人々が屋上で生活を続けていたのですが、やはりZQNも多く、食料など問題を抱えていて…。

原作の登場人物ををベースにしつつ、かなりの独自展開を見せていますが、時間の限られた映画としてはよくまとまっていたと思います。
原作で英雄はかなりの妄想癖があり、映画でも何度か出ますが、くどいほどじゃないです。
主演の大泉洋が鈴木英雄のイメージ通りに好演していました。
クライマックスとなるアウトレットモールでの脱出をかけた戦いには目が離せなかったですし、まさしくヒーローとなった英雄が格好良かったです。
ヒロインの比呂美を演じた有村佳純は可愛くて魅力的だったけど、いじめられていたという原作の背景がまったくなくて、完全に感染しなかった理由がわからないままでしたね。*5
細部はともかく、映画としては原作設定を活かしつつ、ちょうどよい区切りで終わらせることができたと思います。

*1:誰も自分のせいで、めんまが死んだと思い込んでいる。

*2:昔じんたんの母親が作ってくれた。

*3:劇中では早くて数分程度だが、実際は噛みつかれた位置などにより個人差あり。噛みつかれて傷つく(出血)ことで発症。

*4:買い物や通勤している様子や「いらっしゃいませ」を繰り返したり。意味不明な行動を取るZQNもあり。

*5:原作では半感染した人には共通点がある。