7期・55冊目 『白銀ジャック』

白銀ジャック (実業之日本社文庫)

白銀ジャック (実業之日本社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
「我々は、いつ、どこからでも爆破できる」。年の瀬のスキー場に脅迫状が届いた。警察に通報できない状況を嘲笑うかのように繰り返される、山中でのトリッキーな身代金奪取。雪上を乗っ取った犯人の動機は金目当てか、それとも復讐か。すべての鍵は、一年前に血に染まった禁断のゲレンデにあり。今、犯人との命を賭けたレースが始まる。圧倒的な疾走感で読者を翻弄する、痛快サスペンス。

大勢のスキー・スノーボード客で賑わう冬の大型スキー場。
そこに届いたのがゲレンデのどこかに爆弾を隠したという犯人からの脅迫状でした。
いわばゲレンデ全体を人質に取られた形で対応に苦慮するスキー場ですが、結局経営会社の社長判断で警察には届けずに犯人の要求に応じて現金を受け渡すことになります。
もしも安全策を取って警察に届け出た場合はシーズン途中での閉鎖はもちろん、そのような形でケチがついたスキー場は評判がた落ちで、その場合の損失は要求額の比ではないという経営上の判断なのですが、現場の安全を預かるスキー場スタッフたちは納得がいかないわけで。
そしてまんまと取引が成功したことに味を占めたのか、それとも最初からの計画だったのか犯人から二度目の現金要求が来て…。


最後まで謎を引っ張った上で明かされる意外な犯人とその意図。良くも悪くも2時間もののサスペンスドラマのようにまとまっているな、という印象でした。
場所が場所だけにスキー・スノーボードが重要な道具となっているのですが、その道の素人でもドラマを見ているかのようにイメージが掴めて読みやすかったのはさすが東野圭吾だと言えましょう。
ただ、脅迫があったことはスキー場側の幹部のみの秘密だったのに、あれよあれよのうちに部外者まで漏れていく様は「おいおい」と思いましたけどね(笑)
それに読み終わってみれば、茶番劇とも言える幕切れに物足りなさが残りました。
あくまでも素人が動きまわった結果、ボロが出たというだけで、周到に見えた犯行計画にしても、もしも強引に警察に介入してもらっていたら脆く崩れたように思えます。
1年前の死亡事故の遺族である入江父子という重要人物(のはず?)にしても活かしきれてなくて中途半端でした。
今まで読んだ同著者の傑作と比べては悪いのですけど、数ある著作群の中では並以下の評価となってしまいますね。