6期・21冊目 『流星の絆』

流星の絆 (講談社文庫)

流星の絆 (講談社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
惨殺された両親の仇討ちを流星に誓いあった三兄妹。「兄貴、妹は本気だよ。俺たちの仇の息子に惚れてるよ」14年後―彼らが仕掛けた復讐計画の最大の誤算は、妹の恋心だった。

分厚い文庫にしてはスラスラ読めてしまう。さすが東野圭吾といった感じでそつない流れに伏線を活かした展開、意外な犯人、親しみの持てるキャラクターなど読者を楽しませる要素がふんだんに詰まってる作品ですね。
3兄妹がたまたま親に黙って流星群を見に行った深夜、両親が何者かに殺される。ショックから立ち直った兄妹は犯人に対して復讐を誓う。
時は流れて、詐欺や失職といった経験を経て他に頼る術も無い兄弟は、それぞれの長所を活かして騙されるよりも騙すことで世間を生き抜くことを決意する。
序盤はこのあたりでぐっと読者は引き寄せられますね。
そして事件の時効間際にたまたま詐欺の標的にしたターゲットがあの事件の犯人の身内からもしれないというのがドラマチック。
兄妹で犯人あぶり出しの計画を進めるものの、思わぬ展開が待っていた・・・。


個性的なキャラクターの活躍も魅力ですが、物語の中で重要なキーとなっているのがハヤシライス。被害者と被疑者を結ぶのが秘伝のハヤシライスとなっていて、それに絡んで洋食店経営に関する薀蓄が自然に描かれているのが面白みを増します。
それに対して事件のオチに関しては、殺人に至る動機付けが弱く、現職○○がそんなあっさりと人を殺すものかと納得はいかなかったですね。いや現実にはあるかもしれないですけど、これだけ舞台を揃えた物語の結末にするには普通過ぎる。
そんなわけで読み終わった直後の感想としては全体的にあっさりしすぎるかなと。
評価が高い他の作品と比べても刺激やメッセージが足りず、さほど深い印象を与える内容ではありません。思うに、今まで東野圭吾の作品を読み続けてきた人よりも、普段あまり読書をしない人向けかなと思いました。