10期・35冊目 『ST警視庁科学特捜班 黒の調査ファイル』

内容紹介
ST黒崎が沈黙を破るとき――男は、語らず、動く。
歌舞伎町の連続発火事件と中国マフィア抗争の裏
携帯のワンクリック詐欺に遭った役者志望の男が、チャイニーズマフィアの名を騙り、悪徳業者に逆襲を謀る。そのマフィアのボスは、歌舞伎町の覇権を巡り別組織と暗闘を繰り広げていた。そして歌舞伎町での連続放火事件に出動したST――絡まる謎に“沈黙の男”黒崎が動く! 「色シリーズ」、堂々のラスト。

先日読んだ「赤の調査ファイル」に続いて今回は黒です。本当は色シリーズの最後だったようですが、順番は気にせずに選びました。
自己主張が激しいSTメンバーの中でもどちらかというと黒を象徴する黒崎は寡黙ということで目立ちませんが、人間ガスクロ(ガスクロマトグラフィー)と呼ばれるほどに発達した嗅覚を持っていて、聴覚担当の結城翠と組んで人間嘘発見器になれる他、武術・武道にも会得・精通しているという。
そんな彼が主人公となっている本作は携帯電話のワンクリック詐欺に引っかかった役者志望の男が仲間を集めて復讐を図るという場面で始まります。
一方、STのメンバーは歌舞伎町の中でたびたび発生する火事騒ぎの捜査に呼ばれたのですが、それは全く火の気の無い部屋で発火原因は不明。しかもパソコンなどが故障する怪奇現象が前触れがあったという刑事たちも困惑している事態でした。


火の気の無いところで連続して発生した事件。しかもチャイニーズマフィアの縄張りが複雑に入り組んだ一帯というところで抗争絡みの放火が疑われたのですが、原因は一向に掴めず。
そんな中でSTメンバーによる科学的アプローチによる捜査で犯人を検挙してゆくくだりはさすがによくできたドラマのようで爽快の一言ですね。
詐欺師を騙すために組んだチームに黒崎*1が絡み、素人チームをちゃっかりサポートしつつ、チャイニーズマフィアを燻りだす流れも巧い。
ただ細かく考えるとおかしい点が。
例えば常に最新の性能を維持するほどPCに拘るチャイニーズマフィアのボス王卓祭が削除されたファイルが復元できること*2を知らなくて、それが逮捕のきっかけになったなんて間抜け過ぎます。
更に結果的に殺人事件の犯人を検挙するためとはいえ、STメンバーの一人がが詐欺&強盗の片棒を担いでしまうのはどうかと。
まぁ難しいことを考えずに楽しめるエンターテイメント作品なんでしょうな。

*1:こっちが先だろうけど、漫画『クロサギ』を思い出した

*2:それが可能なフリーソフトがある