- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 1997/03/01
- メディア: 文庫
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内容(「BOOK」データベースより)
安生拓馬、丹羽潤也、日浦有介、佐倉翔子。かつて世界的に活躍したスポーツ選手だった彼らには、葬り去らなければならない過去があった。四人は唯一彼らの過去を知る仙堂之則を殺害し、いっさいのデータを消去。すべてはうまく運んだかに思われたが…。毒グモのように忍び寄る影が次々と彼らを襲った!迫りくる恐怖、衝撃の真相!俊英が贈る傑作サスペンス。
恩師を殺害した四人の元プロスポーツ選手を相手に復讐する謎の超人。
わかるのはわずかに日本語を理解する外国出身の長身女性であり、コードネームはタランチュラ。
狙われていることを知った四人の側も自身の生活を守るためにそれぞれ迎え撃つか逃げ切るか選択を迫られる・・・。
読み始めた当初はわりと単純なストーリーだな思ったました。
主人公は言葉を発しないものの、想像を絶する身体能力と目的のためには手段を択ばない冷酷さを兼ね備えていて、冒頭の殺人事件を追う警察から早々にマークされるも、人間離れした行動力によって捜査は後手後手に回ってしまう。
守る四人に狙うタランチュラ、それを追う警察という構図であり、ある程度先は読める展開です。
それが終盤にスポーツ医学界の異端者・仙堂之則の過去が明かされるに従い、人間心理の罪深さとタランチュラの哀しい宿命が巧妙にブレンドされたサスペンスとして読み応えを感じましたね。
タランチュラに対する戦闘力では一番有力と思われた人物が真っ先に消えて、意外な人物がどんでん返し。そして感情を持たない殺人マシーンの如き主人公の最期に一瞬の感情表現を見せたくだりにほろりとさせられます。
そのあたりの読者を翻弄させるさまはさすがこの著者だと思えましたね。
東野作品の中では知名度低く(?)*1、実はさほど期待していなかったのですが、良い意味で期待を裏切られた作品でした。
*1:主人公の異質さとスポーツ界のタブーを取り上げているだけに映像化しにくいのだろうな