7期・56冊目 『むかし僕が死んだ家』

むかし僕が死んだ家 (講談社文庫)

むかし僕が死んだ家 (講談社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
「あたしには幼い頃の思い出が全然ないの」。7年前に別れた恋人・沙也加の記憶を取り戻すため、私は彼女と「幻の家」を訪れた。それは、めったに人が来ることのない山の中にひっそりと立つ異国調の白い小さな家だった。そこで二人を待ちうける恐るべき真実とは…。超絶人気作家が放つ最新文庫長編ミステリ。

7年前に別れた恋人・沙也加の頼みで共に別荘地にひっそりと建つ家に訪れた「私」。
そこは沙也加の亡き父が釣りと称してたまに通っていた家であり、地図と共に遺品の中から出てきた鍵はその家のものだと確信。そこに行けば沙也加の消えた幼い頃の記憶の手がかりがつかめるのではないかと期待を抱くのですが・・・。
風変わりな家を舞台にそこに何があったか、沙也加の幼い頃の記憶が失われたのは何故か解いていくストーリーとなっています。


玄関ドアはボルトで固定されていて、唯一の入り口は裏口の地下倉庫のみ。
なぜか11時10分で止められている複数の時計。
つい最近まで家族が暮らしていたように残された生活品の数々。
しかし日付は二十数年前だったり数年前だったり、法律家である父親の書棚は古本屋から購入した書籍ばかりとアンバランスさが目立つ。
手紙や書類からは住所を記載したものが何一つなかったり。
二人は子供部屋から発見した日記を手がかりにするのですが、そこに登場するのは夫婦が遅くに生んだらしき小学生の男の子という三人家族。通いの家政婦とその娘・さやか。チャーミーという猫?
そして父親の死後に突然現れ、少年を虐待していくことになる「あいつ」。
読み進めていく中で推測は二転三転、止まらなくなっていきます。決して明るい結末が待っているとは到底思えないのに。
途中からどことなくホラー要素が見られていたのは、そこにただならぬ死の影がちらついていたからのような気がします。


舞台として展開されるのは一つの家のみなのですが、そこかしこにいくつもの伏線が張り巡らされていて、終盤一気に結びつけられていくさまはさすがですね。
そして現在の沙也加が持つ悩みに繋がる記憶も取り戻すのですが、それはあまりにショッキングな内容でした。
タイトルはプロローグとエピローグに登場する「私」の育った事情であり、ある意味沙也加の境遇と重なり合っている部分もあって彼女に惹かれていたのではないかという。
どちらも親子関係の歪みの弊害が子に出てしまったと思うと、なんともやりきれない気持ちにさせられますね。