5期・20冊目 『蜂工場』

蜂工場 (集英社文庫)

蜂工場 (集英社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
16歳のフランクはスコットランドの小さな島で父と二人で暮らしていた。幼い頃、犬に噛み切られてペニスをなくした彼は学校へも行かず、奇妙に残虐な方法で小さな動物をなぶり殺して日を過ごしていた。ある日、精神病院にいるはずの兄から電話があった。「いまから帰る」期待と恐怖に戸惑うフランク…。イギリス文学界を騒然とさせたニューホラーの旗手、イアン・バンクス衝撃のデビュー作。

いわば幼い頃に不幸なアクシデントによって去勢されてしまった少年が、家のある小さな島をわが領土とみたててことさら男らしく振舞おうとする、主人公視点に限られたどこか奇妙な物語。内容は戦争ごっこや動物いじめが多く占め、まぁ男の子にありがちなことだと思うのですが、遊びの枠を超えて極度に残虐でもあり、心理的にも行き過ぎた中二病と言っていいほど。そこはやはり去勢が影響するのか・・・。


それが兄からの連絡をきっかけに喜びとも恐れとも言える複雑な状態に陥り、過去の回想が始まっていく。
カイトによって空へと連れ去られる少女、兄が病院で見たモノなど随所に「これは・・・」と思わせるョッキングな出来事が明らかにされ、全体的に圧倒される筆致ではありますが、日常生活の描写がくどいとも言えます。
結局、誰も彼もイカれていたわけで、本当に怖いのは人間の心だと思わされますな。
タイトルの蜂工場とは、時計版の中に迷路を作り、蜂が辿りついた数字によって処刑方法が決まるという占いも兼ねた機械。結局、主人公も蜂工場の蜂と同じように自身も運命に翻弄されていたという驚きの結末が待っています。