7期・17冊目 『ライトニング』

ライトニング (文春文庫)

ライトニング (文春文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
いまは流行作家としてときめくローラ・シェーン、かつては孤児院で辛酸をなめた薄倖の美少女だった。これまでの生涯、何度か人生の危機や事故に見舞われそうになったが、そのつど、どこからともなく立ち現われて危難から救ってくれた“騎士”がいた。そのたびに、空には閃光が…。ジャンルを超えた傑作スーパー・スリラー。

自宅の雑貨店がジャンキー(麻薬常習者)の強盗に襲われた時、そして唯一の肉親である父を亡くして孤児院に入ってから小児愛好者に目をつけられて乱暴されそうになった時、雷鳴と共に謎の男が現れて窮地を救っていく。
薄幸の美少女ローラは彼のことを守護天使を呼び、心の支えとしていた…。


男(シュテファン)は確実にローラのことを大切に思っており、なんらかの関わりがあるという、時を超えたロマンス・ストーリーなのかと思わせます。*1
しかし実はシュテファンは1944年のナチスの研究所から来た人物であり、極秘開発されたタイムスリップによって未来技術を持ちかえり戦局を打開しようとしていたメンバーの一人だったという驚きの秘密が明かされるのです。
任務において未来を知るにつれてナチスに対する疑問を抱くようになったシュテファンは、ある日成人して流行作家となったローラ(とその著作)に惚れこんでしまう。
本来ならば出産時の事故によって半身不随となっていた彼女のために歴史を変えた(冒頭の場面)のですが、歴史は彼女に別の不幸を要求し、そのたびに致命的な場面で介入してきたという種明かしがあります。


その後、結婚して子が生まれ、作家としても成功を掴んだローラですが、シュテファンを尾行してきたゲシュタボの襲撃に巻き込まれて夫を失ってしまいます。
怪我を負ったシュテファンを匿い、子のクリスとともに時空を超えたゲシュタボの襲撃に対して銃を振り回して戦うローラ、というアクション展開へと続いていくのです。
記録された情報を元に未来からの待ち伏せをしてくる敵のために、ローラたちは細心の注意を払っての逃亡生活を強いられるのですが、根本的な問題解決のために彼らが図った計画とは・・・?


長い物語ですが、「基本的には過去には行けない。未来のみ。ただし一度行った時間に同一人物は再度行けない」という法則にのっとっており、タイムスリップを上手に活かした内容、まるでジェットコースターに乗っているようなスリルとサスペンスが味わえる作品です。
ヒロイン・ローラの人生はわずかな期間を除いて辛い出来事ばかり続くのですが、親友セルマとのユーモア溢れる会話を始め、決して卑屈にならずに前向きに生きようとする姿が健気ですね。
最後に訪れた彼女の絶体絶命のピンチが一番ハラハラさせられましたが、そこはきちんと守護天使シュテファンが機転を利かせて救うところが最高のシーンでした。
まぁシュテファン以外のナチスが完全に悪の組織扱い&80年代以降に敗戦国が繁栄している様を嘆くのはアメリカらしいというかなんというか…。

*1:ちなみに舞台は1980〜90年代のアメリ