- 作者: 梶尾真治
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2010/06/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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内容(「MARC」データベースより)
幽霊伝説のある旧家に住むことになった「私」は、ある日、突然出現した不思議な少女に魅せられる。150年の「時の壁」を超える恋の行方は? 「黄泉がえり」の作者が放つ、究極のタイムトラベル・ロマンス。
百椿庵(ひゃくちんあん)と呼ばれる古い屋敷には女性しか見えない幽霊が出るという。
脱サラ後、専業作家としての仕事場を兼ねて住むようになった主人公は男性ながら偶然その姿を目にして以来、その美しさに魅されて・・・。
タイムスリップものに慣れた私としては、幽霊話と不思議なカラクリが出てきた時点であらすじが読めてしまうのですが、それでもやっぱり150年の時を超えて出会った二人の頓珍漢な会話とか、周囲があまりにも違いすぎて戸惑うさまなどはタイムスリップものの醍醐味として楽しめました。
器具が違いすぎても、自分の務めとしてなんとか台所仕事をこなそうとするつばき。未来の知識を健気に吸収して順応しようとする*1さまがいじましく、主人公ならずとも惹かれることでしょう。
この後、逆に主人公が幕末にタイムスリップしてしまうのですが、どちらかというと思わぬ事態に振り回されがちな主人公よりも、つばきのその言葉使いも含めた人物描写によって物語が引き立っていると言っても過言ではありません。武家生まれながら早くに家族をなくしたこともあって家事全般はパーフェクト。人当たりも良くて街のみんなに親しまれ容姿端麗ながらも丙午の女*2なので縁談が無かったというのはおいしすぎる設定ではありますが(笑)
かつて百椿庵につばきと共に住んでいたりょじんさんがこのカラクリの発明者であり、その装置は不完全なものだけに違う時代に留まるには限界があることがわかります。
やがて訪れる別離。距離と違って時には近づく手だてが無いだけにその辛さが伝わってきます。
他のタイムスリップものでもあったように、時を超えたメッセージによって終わりにせず、ハッピーエンドに導くのが著者らしいところですかね。そのあたりは、偶然には頼ってはいますがりょじんさんの正体を絡めてちゃんと話を納めてしますね。
*1:後に出てくる「りょじんさん」の影響があったからかもしれない
*2:丙午の年に生まれた女は強いとか男を食い殺すなどという言い伝えがあった。 http://www.hi-ho.ne.jp/y-suimei/hinoeuma.htm