5期・68冊目 『小松左京セレクション2 時間エージェント』

([こ]3-2)時間エージェント 小松左京セレクション2 (ポプラ文庫)

([こ]3-2)時間エージェント 小松左京セレクション2 (ポプラ文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
茶店で暇をもてあましていた失業中の戸田は、突然現われた自分と同じ顔の男に、「時間管理局」のタイムパトロールマンに採用されてしまう。奇想天外の連作SF『時間エージェント』ほか、エロティックなSF『愛の空間』など、6篇の傑作短編を収録したセレクション第二弾。

小松左京による、ちょっとおかしくてエロチックなSFショートが満載の作品集。*1タイムトラベルものに凝っていて、表題作の「時間エージェント」目当てで購入したのですが、他の作品もその一筋縄でいかない発想と展開に充分楽しめました。
収録作品は以下の通り。
「時間エージェント」
「四次元トイレ」
「辺境の寝床」
「米金闘争」
「生ぬるい国へやって来たスパイ」
「売主婦禁止法」
「愛の空間」


「時間エージェント」はひょんなことで未来の自分自身に頼まれてタイムパトロールをすることになったという連作もの。それぞれ別の時代から生き物や人を”密輸”しようとしたり重要人物の生死まで介入して歴史そのものを書き換えようとする時間犯罪者との対決が見もの・・・でもあるんですが、戸田の上役であるマリ*2のキャラクターに圧倒されてしまう。それに二人の掛け合いが読んでいてうらやま・・・いや、実に楽しそうなんですよね。
時には命の危険に晒されるほど危ない仕事ではありますが、こんな上司ならば組んでみたい気がしました。*3ただ、とある事件で行方不明になってしまい、相棒が変わってしまったのが個人的に残念でしたが。


他に奇想天外な展開で気に入ったのが、「米金闘争」、「売主婦禁止法」、「愛の空間」ですね。
「米金闘争」は税金の徴収制度にキレた(頭もちょっとキレた)SF三文作家が国家に対して復讐を企てた結果、なんと日本はじめアジア各国が米本位制になって、金本位制の欧米と対決するというところまでいく、壮大なドタバタコメディ。ムチャクチャなのにあれよあれよを言う間に進んでいく展開がたまらない。
「売主婦禁止法」は機械化によるサービスが極端に進んだ未来で男女としての役割は無くなり、人々はレジャーとしてのフリーセックスを謳歌する世の中。
そんな中でたった一人の男性に貞節を尽くし、子さえ身ごもってくれるという主婦サービスが男性の人気を呼び、女性の反感を引き起こし・・・。こういう皮肉が利いた作品も好きです。
「愛の空間」はなんといっていいやら。謎の物質(?)のおかげで無機質であろうがなにもかもエロティックに感じてしまうようになってさあ大変。満員電車のくだりは想像するだけでもうヤバイ。なんだかんだいってもその影響をあびた人たちはいたって幸せそう。
もしこれが全世界に広がったら少なくとも争いが消えるでしょうね。もっとも仕事にはならなそうですが。

*1:1975年8月に新潮文庫で刊行されたものの復刊とも言える内容

*2:早熟化が進んだ未来人だけに主人公が驚愕したその年齢が気になる

*3:モンキー・パンチが漫画家しているとのことで、ルパン三世峰不二子に脳内変換するとしっくりくるかも