- 作者: 紀田順一郎,東雅夫
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2005/12/10
- メディア: 文庫
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内容(「BOOK」データベースより)
明治以降、日本の怪奇小説は、怪異を客観化することで大きく革新された。幻想の科学的な解釈。社会の合理主義から逸脱し怪奇を紡ぎ出す、意識の闇への沈潜。あるいは、疑問や躊躇を抱きつつ怪奇幻想を受容し肯定する懐疑精神…。さらに、戦後半世紀の変化が怪奇小説にさらなる変容をもたらす。ミステリ、SF 等のジャンルを超えた作家たちによる、多彩な17編を収める最終巻。
3巻目に入ると個人的に馴染みの作家が増えました。でも今見ると豪華な作家陣ですね。
こうして読んでみると、戦後の怪奇小説は人間外によるものだけでなく、人間の意識下における抽象的なものなどかなり幅が広がったようですが、好みで言うと限られますね。
なんだかんだいっても恐怖を生むのは豊かな想像力。そういう意味で3巻では少年時代の恐怖体験を描いた作品に強い印象が残るのです。
- 小松左京「くだんのはは」
今年になってから同タイトルの短編集を読みましたね。http://d.hatena.ne.jp/goldwell/20080325/1206454465
- 筒井康隆「遠い座敷」
もう十年以上前に読んだことのある作品ですが、その時よりも今の方が主人公の不安や焦燥がよく伝わってきた気がします。やはり子供心には昔の純和風の屋敷は何かと想像力がかきたてられるものがありますね。
- 高橋克彦「大好きな姉」
身近な年上女性に対する憧れと未知なるものへの恐怖が入り混じった少年の心理描写がなかなかのもの。過去の回想から現代に戻った時点でオチが待っているのだけど、その後が非常に気になってしまいます。
怖さという面はともかくいいなぁと思ったのが、
もう一つ歴史好きとしてたまらなかったのが、荒木良一「名笛秘曲」。大飢饉という人間の生存本能が脅かされる中での集団狂気の恐ろしさ。対立しあう村同士に引き裂かれても愛し合う男女の悲しい物語でもあります。
この3巻で日本の怪奇小説傑作集を読み終えたので、次は本家である海外の傑作集の方も読んでみます。