3期・67冊目 『あなたに似た人』

あなたに似た人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 22-1))

あなたに似た人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 22-1))

出版社/著者からの内容紹介
短篇の一つ一つにちりばめられた恐怖、幻想、怪奇、ユーモア、機智……数多くの奇妙な味の短篇を発表している鬼才ダールが、賭博に打ちこむ人間たちの心の恐ろしさと、人間の想像力の奇怪さをテーマに描いた珠玉の掌篇十五篇を収めた代表的短篇集。一九五三年度アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作!

いやぁ、なんとも巧いなぁ、の一言です。
洗練された典雅とも言える文章がそれぞれ魅力ある雰囲気を醸し出し、最後に捻ったオチで驚かされる。そこには毒とユーモアが程よく散りばめられて好きですね。登場人物の描写としても物語を引き立てるような深い洞察がなされています。
どこかで読んだような内容のものもあったのですが、おそらく後の作家のお手本とされているからでしょうかね。


この中でどれが良かったかを選ぶのは難しいですが、あえて印象に残っているのはこちら。
どんな結末が待っているのかハラハラさせられた「味」と「南から来た男」。そして前者は秘密を知っていた老メイド、後者は最後の女の告白と手が目に浮かぶほどの印象を残します。
「告別」は最後まで読んで「おや?」と思い、もう一度読み直して改めて納得。意趣返しの手段としてここまで凝るのはさすが上流階級の人々と言うべきか。
「おとなしい凶器」はある意味ミステリのネタの一つとなってそうだけど、この中では夫人の機智と何も知らない警官たちの台詞にニヤリとさせられる。
SF的なユーモアが冴える「偉大なる自動文章製造機」は、発明者とその上司のやりとりがなんとも愉快。既婚者としては、「わが愛しき妻よ、鳩よ」がなんとも怖いです(笑)
そういえばこの短編集に出てくる女性はほとんど恐怖を感じさせる存在なのはなぜでしょうかねぇ・・・。