6期・74冊目 『ライオンハート』

ライオンハート (新潮文庫)

ライオンハート (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
いつもあなたを見つける度に、ああ、あなたに会えて良かったと思うの。会った瞬間に、世界が金色に弾けるような喜びを覚えるのよ…。17世紀のロンドン、19世紀のシェルブール、20世紀のパナマ、フロリダ。時を越え、空間を越え、男と女は何度も出会う。結ばれることはない関係だけど、深く愛し合って―。神のおぼしめしなのか、気紛れなのか。切なくも心暖まる、異色のラブストーリー。

時代を超えて巡り会う男女、エドワードとエリザベス。必ずしも記憶を共有するわけでもなく、また出会ったからといって結ばれる境遇でも無い。
ただ「会った瞬間に、世界が金色に弾けるような喜びを覚える」ほどの歓喜。そんな二人の出会いと別れの物語です。よく運命の出会いなどと言いますが、だからと言ってバラ色の未来が約束されているというわけでもなく・・・。
例えば、最初の「エアハート嬢の到着」*1では、大不況のために家族と恋人を失い、失意の中で群衆の中でさ迷う学生のエドワードと病弱な少女のエリザベスが出会う。前の出会いの記憶を持つのはエリザベスのみで、必死にやっと出会えたことを訴えるのですが、エドワードはなかなか現実として受け入れられない。自殺しようとした彼を身を呈して救った時に失ったものの大切さをやっとわかったという悲しい結末。
その逆のようなパターンもあれば、記憶を取り戻した時にはすでに死が迫っていたり。
そんな二人のルーツは、激動の時代を生き、運命に翻弄されたイギリスのエリザベス女王にあるという展開になっていきます。


時間と記憶を超えて巡り合う二人の物語として、その雰囲気は非常に味わいがあると言えます。
それぞれ独立して読める各々のエピソードでは、まさに目に浮かぶような風景*2の描写が特徴的であり、運命の二人を象徴していますね。
ただ、読んでいてもどかしいというか、まどろっこしい思いに捉われるのも事実。後半に入ると、今までのシーンが時代を超えて繰り返されます。*3
普通の恋愛小説として感動的な結末を期待してはいけないかもです。あくまでも雰囲気を味わう作品でしょうかねぇ。

*1:大森望・編『不思議の扉1 時をかける恋』収録。http://d.hatena.ne.jp/goldwell/20110918/1316353471

*2:実在の絵画も使われている

*3:テレビドラマで最終回近くになると回想シーンが増えるのに似てる