6期・36冊目 『時の風に吹かれて』

時の“風”に吹かれて (光文社文庫)

時の“風”に吹かれて (光文社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
あなたにおぼえていてほしい、わたしの未来の物語。読み終えたら、きっと、誰かに話したくなる。胸をうつ、心が躍る、不思議の語り部梶尾真治の珠玉集。

収録作は以下の通り。

  • 時の“風”に吹かれて
  • 時縛の人
  • 柴山博士臨界超過!
  • その路地へ曲がって
  • 月下の決闘
  • 弁天銀座の惨劇
  • 鉄腕アトム メルモ因子の巻
  • ミカ
  • わが愛しの口裂け女
  • 再会
  • 声に出して読みたい事件

愛しい人を救うために時を超えていく。「クロノスジョウンター」などで見せたタイムトラベル・ロマンスが著者の特色であり、短いながらもそれが存分に詰まっているのが表題作。
時間旅行者を戻そうという力を「時の風」と表現しており、設定としては「クロノス〜」に近いですが、こちらの方が簡潔にまとめられていますね。もちろん歴史が変わってハッピーエンドが描かれるわけですが、「時の風」が吹いて改変の跡を消し去っていくラストが味わい深いです。
もう一つ時間に関するのが「時縛の人」。タイムトラベルに関してはさすがに一捻りありますね。
他のも日常の中で出会った不思議エピソードが収められています。ロマンスだけでなく郷愁誘うものもあればコメディタッチもあって内容も様々。
ショートショートとしてオチも楽しめた(愛猫が人間の女性に見えてしまう男の話である「ミカ」)もあれば短すぎるというか強引過ぎて物足りなかった(マッドサイエンスト話としては面白いが、最後の惨劇は必要だったのか「柴山博士臨界超過!」)りもしたり。
その中でも特に印象に残ったのが、都市伝説である口裂け女を切ないロマンスにしてしまった「わが愛しの口裂け女」でしたね。オチの会話はこれしかないって感じでした。