8期・16冊目 『ダブルトーン』

ダブルトーン

ダブルトーン

内容(「BOOK」データベースより)
私の記憶の中のあなたは誰?ユミという同じ名前を持つ二人の女性が、互いの記憶を共有している不思議に気づいた時から、衝撃的な愛のドラマが始まった…。タイムトラベル・ロマンスを超えるラブ・サスペンスの新境地。

この作品の中ではユミという同じ名を持つ二人の女性が登場します。
ただし主人公としての自我は一人でも、人格を含めた環境そのものが交互に入れ替わるという特殊な事情を抱えているのです。
一人は保育園に通う娘を持つ主婦・裕美。自分に無関心な夫や結婚後の平凡な日常に不満を持っている。
一人は独身で24歳の由巳。学生時代のアルバイト先である広告代理店に運良く就職できて充実した毎日を送っている。
昨日は裕美だったが今日は由巳といった感じで、朝起きると裕美もしくは由巳としての生活が始まり、自分の中のもう一人のユミの存在を自覚しつつも時間と共に記憶は薄れてゆく。


なぜそんなことが起きてしまうのか?
本人もわからないまま淡々と時が過ぎ、やがて由巳の前に裕美の夫であるはずの洋平が現れて徐々に親しくなり、同時にタツノという不審な男性が目につき始める中盤から一気に物語が動き出します。
そしてわかったこと。
二人の間には二年のずれがある。
由巳の生きている世界では、二年前に裕美は原因不明の死を遂げ、洋平は父子家庭として娘を育てている。
果たして裕美の死とタツノは関係あるのか?


残されたわずかな時間の中で裕美の死の原因に迫る終盤は次第に緊迫感が高まってゆき、そして衝撃的な結末。最後まで一気に読んでしまいました。
近い未来に迫った死を変えられるのかというタイムトラベル的な展開にサスペンスを見事に融合させ、何気ない日常の中にこそ幸せは存在すると気づかせてくれます。
個人的には裕美亡き後の洋平の家に由巳が訪れて料理をふるまい、娘が「ママの味だ」と驚いたシーンにうるっときました。
ところで、女性読者寄せのためかもしれませんが、紹介文はちと的外れですね。
既婚男性でも充分楽しめる内容でした。