8期・17冊目 『リライト』

リライト (Jコレクション)

リライト (Jコレクション)

内容紹介
過去は変わらないはずだった――
1992年の夏、中学2年生の美雪は、 未来からやってきた保彦と出会う。
旧校舎崩壊事故に巻きこまれた彼を救うため、10年後へ跳んで携帯 電話を持ち帰った。そして2002年の夏、思いがけず作家となった美雪は、その経験を題材にした一冊の小説を上梓した。
彼と過ごしたひと夏、事故、時空を超える薬、突然の別れ……。
しかしタイムリ ープ当日になっても10年前の自分 は現れない。
不審に思い調べてい くなかで、同級生の連続死など記憶にない事実が起きていることに気づく。
過去と現在の矛盾が生み出した、残酷な夏の結末とは――

転校生は約300年後の世界からやってきた未来人だった。
1992年7月のある日、日直の用事で一人旧校舎に来ていた美雪は、偶然タイムリープの瞬間を目撃したためにその秘密を共有し、この時代に出版された小説を探しに来たが1992年の事情に疎い彼(保彦)のために協力することになります。
保彦と楽しい日々を過ごしていた美雪ですが、夏休み直前、いつものように旧校舎で話していた際に突然の崩壊事故が起こってしまいます。
一人外に投げ出された美雪は校舎内で事故に巻きこまれた彼を救うため、手にしていたタイムリープ薬を使って10年後へ跳んで目の前にあった携帯電話を手にし、*1奇跡的に呼び出しに成功して保彦を救うことができたのです。
10年後の2002年7月。大人になった美雪は時を超えてくる過去の自分のために自室に携帯電話を置いて待っていたのですが、10年前の自分は一向に現れない。
果たして美雪が保彦を救うという歴史の筋書きは変わってしまったのか?


1992年の夏に起きた出来事と、予定調和が崩れた2002年の美雪たち。
交互に物語が進むのですが、読み進むにつれ、少なからず混乱します。
なぜなら最初に美雪と保彦の物語だと思ったのに、1992年の方では章が変わるたびに違う女生徒が美雪の役を演じ、そして2002年の時代に彼女は誰かに殺されたことになってる。
1992年では美雪と保彦以外に「これから起こること」を知っている人物が登場するわ、2002年では小説家となった美雪の正体を執拗に伺うストーカーまで登場。
謎が大いに深まったところで、地元で開かれた同窓会にて一気にすべてが明かされるという流れになっています


未来から来た同級生、タイムリープの際に発するラベンダーの香り、記憶の書き換えなど、『時をかける少女』のオマージュであることは一目瞭然なのですが、読み進めてゆくと正統派ジュブナイルとして書かれた「時かけ」とはだいぶ趣向が違うことがわかりますね。
大人になると何かと過去を美化しがちですが、もしも暗黒の時代を過ごした者がタイムリープという力を手にしたら?
終盤明かされた保彦の記憶書き換えの行為にかなり強引さを感じたのですが、それを逆手に取って、一人意に逆らった少女によって巻き起こった悲劇というところに工夫を感じられました。
良い意味で予想を裏切られた作品でしたね。

*1:保彦以外が使うと5秒しかもたないという設定