6期・9冊目 『時空の旭日旗2―まだ見ぬ過去(きのう) 』

内容(「BOOK」データベースより)
真珠湾、ミッドウェイでアメリカ太平洋艦隊に大打撃を与えた日本は、フィリピンでの米陸軍駆逐作戦を展開。迫いつめられたフィリピンの米陸軍は、将兵の脱出までの時間稼ぎをイギリスの東洋艦隊へと依頼する。1941年12月。南シナ海で南遣艦隊と東洋艦隊が激突。日本は「扶桑」と「山城」の2隻を失った。さらに米・英連合軍は南シナ海に潜水艦を大量に投入し攻勢に出る。日本は「あずみ丸」の未来情報(A情報)によって開発された対潜ヘリ「千鳥」を投入して連合軍の潜水艦部隊を駆逐する。そして、VT信管を組み込んだ無人噴進弾「桜花」を搭載した「大和」「長門」「陸奥」を編入し、強化された南遣艦隊が再び東洋艦隊に決戦を挑む。超時空シミュレーション戦記。

「あずみ丸」タイムスリップからはや6年。国内外の情勢は史実は劇的に変わったことに加えて、未来情報(A情報)によって軍事面でもソフト・ハードの面でかなり改変されたことが見受けられます。
史実においても、敵側の準備不足もあって序盤の攻勢時は強かったが、一旦防御に回ると脆い部分が見えた日本軍。そして決戦志向・補給軽視により補給線など弱いところを衝かれてジリ貧になっていたのはよく知られているわけで、今回はそこを重点的に改善している様子(ヘリコプター運用の護衛艦隊や工作艦など)がわかります。ただ、明治維新以降二度の戦争を経て作られた体質がそう簡単に変わるかというのが疑問ではあります。また電子戦における人材育成が間に合わず「あずみ丸」の乗員が駆り出されるという描写もあるので多少は意識しているのかと。


史実とは変わった形で戦争の口火が切られた以上、その後の行方は「あずみ丸」の面々としては未知の状況となります。いくら未来な技術を取り入れ、専守防衛に戦略をシフトしたとはいえ連合軍も考えてくるわけで、序盤はフィリピンを巡る攻防にて連合軍に先手を打たれて苦慮する場面が続きます。
それにフィリピンにおいて独立派に組したことで、史実と同様いやそれ以上に強力な包囲網を作られている感があります。ただ連合軍も補給線が伸びきっているので(前巻でハワイを叩いたのが効いてる)、物量的には日本に分があるものの、史実と違って他国に軍を強引に展開できないという縛りがあるのですね。


しかし後半は本腰入れた日本軍の強力な反攻作戦が見もの。ここでは陸海の新鋭航空機に大和も長門も惜しげなく出してきます。航行中の戦艦大和を間近で見られるのは羨ましいなぁ(笑)
全体的に戦闘描写そのものは悪くはないんですけど、佐藤大輔や横山信義といった作家と比べるとちょっと物足りないかな、というのはありますね。経過があっさりしすぎて臨場感が足りないというか。話の展開そのものは良くできてると思うのですが。