5期・61冊目 『擾乱の海4 マリアナの暴風 』

擾乱の海〈4〉マリアナの暴風 (歴史群像新書)

擾乱の海〈4〉マリアナの暴風 (歴史群像新書)

内容(「BOOK」データベースより)
1944年9月、米海軍第五艦隊はマーシャル諸島のメジュロ環礁に集結した。マリアナ諸島とフィリピンへの同時進攻「楔(ウェッジ)作戦」展開のためである。一方、日本軍は米軍の来寇に備えた「防人作戦」を策定。いまなお続く通信途絶の状況下、日本軍は総力をあげて米軍の二正面攻撃を迎え撃つこととなったのだ。新鋭空母「大鳳」を擁する第一機動艦隊はマリアナへ進撃し、二式大艇による索敵線にはマリアナに向かう米艦隊が…。しかしそのとき、電探が使用できない黎明時をついて、米艦載機群が硫黄島を奇襲してきた!?マリアナ諸島をめぐり、日米の総力を結集した海空の大決戦がここに火蓋を切る。

結論から言うと、史実のマリアナ海戦・レイテ海戦を日本側の戦力が揃った状態(特に七面鳥撃ちの象徴たるVT信管や航空管制を無効化)したかったためにこんなSF的設定を作ったのかなという気がしますね。損害の回復力を考えると今後日本側は非常に厳しいし。
いやまぁ日中電波無線の類が一切使えないという異常現象があっても史実と同じく日米が戦端を開き状況が推移していくと必然的にこういう決戦が行われるというのはお堅い筋書きなんでしょうが。


で今回はマリアナ諸島を巡る航空戦が主体。
異常気象の影響によって進化した兵器(晴嵐搭載の伊400や索敵用気球である二観)を小道具に出しつつも戦況は攻撃側有利のため米軍有利に進む。なにしろ守る側は索敵が限られるために受身にならざるを得ない。
そんな中、あえてマリアナの基地を犠牲にして、敵攻撃隊のあとをつけて攻撃を行う手段が功を奏する日本軍。*1
なんか最近の横山信義氏はかつての日本軍イジメは若干影を潜め、犠牲は払わせつつも日本を勝たせる傾向がありますね。だって作品上母艦航空部隊の戦力が温存されたとはいえ、エセックス級空母を4隻も撃沈するなんて戦果は一昔前じゃ考えられなかったもの(笑)


それなりに迫力のあった航空戦に比べてちょっとなんだかなぁ〜と思ったのが、いつもの航空戦後の水上部隊同士の戦い。
後部の主兵装をとっぱらって長砲身15cmを満載した金剛の登場にも驚きなんですが、新鋭艦主体の上に数にも勝る米軍相手にほぼ互角に戦わせるなんていつもの横山さんらしくない(笑)*2
いつものようにレーダー制御による砲戦指揮によって自信満々で登場するリーも最近いいとこなし。
金剛以外の戦況はほとんど省略されてて、まるで次巻の大和級3隻登場の前座としか・・・。

*1:作戦を提案した山口多聞を基地司令に配置するのはうまいな

*2:てっきり戦艦部隊がほぼ壊滅。魚雷&夜間航空攻撃によって辛くも撃退するという展開を予想したのだけど