横山信義 『烈火の太洋6-消えゆく烈火』

連合艦隊が総力を挙げて臨んだトラック沖海戦は、米海軍の撃退に成功したものの被害は甚大であった。開戦以来、艦隊の主力を担ってきた空母「赤城」「加賀」、戦艦「長門」他多数の艦艇や航空機が失われてしまったのだ。
もはや彼我の勢力は完全に逆転し、連日の空襲に晒されるトラックの防衛は限界に達していた。
じりじりと戦力を削られ続ける状態に、連合艦隊は苦渋の決断を下す。トラックを放棄し、マリアナに集中させた全軍をもって米海軍との最終決戦の敢行。
果たしてこの戦いの先に講和への道は開けるのか――

シリーズ最終巻となります。前回のトラック沖海戦でも日本軍は勝利は収めたものの被害は大きく、開戦以来の歴戦艦を失ってしまいました。損害回復している間に米軍は海戦前以上に戦力を揃えてくるのが予想されます。
勝っても勝っても戦局の見通しは暗く、このままではジリ貧なのは違いありません。
海戦後のトラック基地を巡る航空戦で日本側は陸軍の航空師団も応援に駆けつけて必死に防戦*1するも、米軍の物量の前に苦戦しています。
結局、日本軍はトラックを実質上放棄し、マリアナ諸島を絶対国防圏として死守する構えを取ります。間もなく運用が開始されるB29の情報が入ってきており、マリアナ諸島を取られたら、本土が空襲圏内に入ること。現に欧州ではドイツが英米軍から激しい空襲を受けていました。日本は列島であるため、内陸国かつ技術が優れたドイツより深刻な損害を受けることが予想できたからです。
スウェーデンで行われている講和交渉が進まない中、日本は来襲するであろう米艦隊を撃退するほかなく、かくしてマリアナを巡る航空戦が幕を開けました。

欧州の戦況に釣られて開戦が早まるという展開を見せた本シリーズですが、結局はいつもと似たような流れですね。違いはソ連の動向くらい。
第二次世界大戦当時の設定に大幅な変更がないため、日本軍は技術や戦術的な工夫で善戦して史実よりはマシな戦況に持っていく。しかし、いくら善戦してもアメリカの圧倒的な国力の前には戦いを続けていても敗北は必至。あとはどうやって講和を迎えるかが鍵となります。
そういう意味では欧州の変化含め、比較的都合の良い結末を迎えるいつもののパターン。戦闘シーン含めて読ませる力はあるんですけど、先が読めてしまうという。
著者はいろいろと考えて書いているのは認められるものの、やっぱりやり尽くした感があります。
好きな作家なので、全然違う設定の作品を読んでみたい気はしますよね。時代を変えてみるとか。ただ、どうしても商業的な需要も考えると難しいんでしょうかね。

*1:初めて対空ロケット弾による攻撃シーンがありました。