5期・62冊目 『南海燃ゆ1』

南海燃ゆ〈1〉海南島の嵐 (C・NOVELS)

南海燃ゆ〈1〉海南島の嵐 (C・NOVELS)

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
ヒトラー座乗の戦艦ビスマルク戦艦大和の主砲弾が炸裂、第二次欧州大戦は終結した。一方、日本の租借地海南島では、共産ゲリラが米国製火器で日本軍に抗戦していた。抗議を受け流す米国に対し、日本は一時退去を決め、米国の手による海南島の査察を要求。だが、撤収を始めたその時、洋上には巨大台風が発生。そして空からはグラマンの襲撃が!?新シリーズ、開幕。

そういえば前作である『旭日の鉄十字』シリーズは第1巻を読んでそれなりに印象に残る内容ではあったのですが、なんとなく続編に手をつけずにいてそのままでした。
いつのまにか完結して新シリーズが出ていたとは。過去記事を漁ったらもう2年も前だから当たり前か。
http://d.hatena.ne.jp/goldwell/20081101/1225543711


本シリーズ冒頭にて第二次世界大戦はドイツがポーランドノルウェーに手を伸ばした時点で終了。しかも連合国側で参戦した日本の戦艦大和がその幕引きしたという。ビスマルクヒトラーが乗っていて、大和に山本五十六がいる時点でムチャクチャだなぁとは思いますがね。
その他にもさりげなく日露戦争が日本の敗北で終わっていたり、ベルサイユ体制は英国がかなり強引に主導して日本の領土が極端に少なかったり大胆な改変の手が加わっていますね。既存シリーズと同様に外国技術導入や組織の改変なども当たり前のように行われており、そういう意味では世界背景は変えても細かな部分は変わらない横山信義より佐藤大輔タイプと言える作家ですな。*1


そして1942年、中国大陸におけるわずかな権益とも言える租借地海南島が舞台。
二度の大戦による対外債務に悩む英国がアメリカの許可を受けてレンドリースの武器を横流し。それが国共内戦中の共産ゲリラに渡って、国民党と組んでいる日本を苦しめる(この時期すでに日英関係は冷却化)。
本元であるアメリカへの抗議が効果ないと知ると自ら査察受入というウルトラCで状況打開を図る日本。
その撤収タイミングで攻撃をかけてきた共産軍により窮地に陥る日本軍。そこでなんと査察のために接近していたる空母エセックスの艦載機隊が急遽支援に。
こういうダイナミックな外交と軍事を絡めた展開を見せてくれるのは著者の特徴ですね。あと妙に武器についての薀蓄が細かい(笑)なんの説明が無いまま新兵器出されるよりはマシですけどね。
ただし景気対策のための大型公共事業が必要な米国首脳(大統領:ルーズベルト、副大統領:マッカーサー)は対日戦を規定路線とし、謀略によって火蓋が切られるわけです。
さて今回はどんな太平洋戦争が描かれるのでしょうか?
続編、忘れなければ読んでみようかと思います。


それにしても、今回も出てきた「社会主義はメイドスキー」。よっぽど著者のお気に入りなんだなぁ(笑)

*1:でも日米戦のきっかけである潜水艦による空母レンジャー撃沈に関しては、『碧海の玉座』を意識していると思ったけどどうだろう?