5期・41冊目 『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

内容(「BOOK」データベースより)
普通のよき日本人が、世界最高の頭脳たちが、「もう戦争しかない」と思ったのはなぜか?高校生に語る―日本近現代史の最前線。

日清戦争から太平洋戦争まで日本が経験した主な戦争を通して近代史を講義した内容です。その時代の人物が書き残した史料や自らの研究内容を惜しげもなく披露して進めていく様は、まさに歴史のダイナミックさが伝わってくるようです。
講義する相手は中高生(もともと歴史に興味あった生徒たちらしい)といえども、たびたび挟む質疑も含めてけっこうハイレベル。自分としては中高の授業ではろくに習う機会の無かった近代史について、こうやって専門家の講義を聴けるなんて羨ましいなぁというのが本音だったり。


日本を中心として列強の国々の立場を含めたグローバルな範囲で歴史を動きを追うので当時の事情が非常にわかりやすい反面、読む側としては「なぜ戦争がそのような結果に終わったのか?」といったような解説部分には不満が残ります。まぁそこは限られた時間での講義を元としているので仕方ないかもしれないです。
戦争に関して、侵略・被侵略の視点から長らく絶対悪である見方が続いていて、それに反発するように今度は正当化する論も出てきました。本書はそういう二元論に陥るのではなく、確かに侵略はあったとした上で当時の日本・中国の事情を深く掘り下げてその競争・対立関係を明らかにしたのは好感持てました。外国の研究者が記した、日本の植民地戦略の一貫性なんて意外と気づかなかった点もありました。


読み終えて思ったのだけど、「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」というより、国の指導者層がいくつもの戦争を回避する分岐があったのに結果的に「戦争」への道へ進んでしまい、国民が積極的にそれに乗ったというのが実情じゃないですかね。それも苦悩の選択の上に、というのではなくなし崩し的に進んでいったという印象が残ります。
満州事変以降、陸軍(関東軍)がきっかけを作っていったのは間違いないですが、国民が政治不信から耳障りの良い・景気の良い話に傾いていってしまったというのもあるんでしょう。太平洋戦争勃発直後の国民の声が紹介されたエピソードなど読んでそう思いますね。