3期・80冊目 『国民の知らない昭和史』

国民の知らない昭和史 (ワニ文庫)

国民の知らない昭和史 (ワニ文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
真珠湾での劇的な勝利が日本を敗北へと導いたとは、誰が予測しえたであろう。されど、勝利に浮かれる大日本帝国の滅亡を開戦の五カ月前、昭和十六年の夏に見越していた若きエリート集団も存在していたのである。この国の舵取りを彼らに託していたなら、その後の未来はどうなっていたのだろうか…。秘められた十三の謎に気鋭の作家・研究家が挑む。好評の「国民の知らない歴史」シリーズ、昭和史戦前篇。

【目次】

太平洋戦争を中心とした昭和前半を対象に一般的に知られている常識から一歩踏み込んだ考察を行っている内容と言えるでしょう。
こういっては何ですが、いわゆる寄せ集め評論は内容が玉石混交であって、今ひとつ物足りないこともあって最近はあまり買わないのですが、パラパラとめくってみたら結構トリビアがありそうなんで買ってみました。


全体的にうなずける箇所もあれば、首をかしげるというか強引過ぎる箇所もあるのは仕方ないか。組織編から戦略・戦術編に関しては、海軍と陸軍という戦争遂行の両輪となった組織のあり方やそれぞれの代表的な人物が有事に対してどう決断・行動したか、さらに日本人の民族的資質から考察する試みはユニークだとは思います。それは現代にも通じるものがあるからです。
いくつか取り上げますと・・・
「日本必敗 昭和十六年総力戦研究所の予測」総力戦研のことは結構知られている存在かとは思います。ほぼ史実通りの敗戦という予測を導き出したわけですが、時の首相が関わっていながらもその成果を生かせなかったのは、目先の損得や軍・政関係者の面子そして国民感情が優先されたからでしょうかねぇ。*1
面白いと思ったのは、「日本陸軍アメリカの暗号を解読していた」。ミッドウェー海戦で知られるように海軍(あと外務省も)の重要な暗号さえもアメリカに筒抜けであったのは有名ですが、陸軍は強度の高い暗号を用いてなかなか米軍には破られなかったこと。そして民間の優秀な人材に協力を依頼して敵側の暗号をかなり解読していたことなど意外でしたね。頭が固いイメージの陸軍ですが、どんな組織でも一括りにはできないということですねぇ。


兵器編に関しては、吉岡平は小説は面白いけど、こういう評論はあまり面白くないの一言。港湾施設を含むインフラの関係で一定の重量以上の戦車の運用は不可能であった日本陸軍だが、苦闘する戦車隊のためにドイツ製重戦車の購入を試みた「ドイツから買ったタイガー戦車」。1945.8.15以降、復員や機雷除去に活躍した軍艦。そしてその後の運命を書いた「連合艦隊終戦」。個人的に好きな2編です。


世相編は3編ともなかなか良い考察だとは思います。特に「戦前期の少女たち」。こういうのを読む機会はなかなか無いですね。今も昔も思春期の年代の本質は変わらない様が伺えました。昭和初めのドラマとか作る時は現代目線じゃなくて、もっと時代考証をしてほしいと思いましたよ。

*1:なんか今でも変わらない気がする