4期・57冊目 『安全保障とは何か―脱・幻想の危機管理論』

安全保障とは何か―脱・幻想の危機管理論 (平凡社新書 (004))

安全保障とは何か―脱・幻想の危機管理論 (平凡社新書 (004))

出版社/著者からの内容紹介
安全保障に幻想はいらない。国家の枠組が緩み、多様な脅威が噴出しつつある現在、日本はどうしていけばいいのか?徹底したリアルな眼で描く、安全保障の基本と現状。

「安全と水はタダ」という感覚が身についてしまっている多くの日本人。*1平和や安全保障に対して抱いている幻想を捨て、より現実的にいかにして安全保障を考えていかなければならないかをわかりやすく説明している内容です。
戦後半世紀以上を経た中で戦争・軍隊をタブーとし直視してこなかったために、著しく軍事上の常識が欠如してしまった日本。しかし国際関係上では、政治経済だけでなく軍事常識を抜きにはできないことを指摘しています。
例としてPKOで派遣される自衛隊の装備や使用にまで細々と制限をかけようとしたこと。どうも本来の目的から外れた瑣末な議論に長々と時間をかけてしまう愚に陥ってしまうのです。
日本においては、国内での事情とか常識がつい優先されがちですが、貿易立国である日本は周囲との関わりを抜きにはできないわけで。
そこで極東の安全保障を考える上で無視できない大国:ロシア・中国の諸事情・戦略にも多くページを割いています。そこを気づかせてくれる点も有用ですね。
そして冷戦崩壊後、世界最大の軍事大国である同時に唯一世界規模で軍事展開が可能な国・アメリカ。好むと好まざるに関係なく日本もアメリカ中心の安全保障体制に組み込まれているわけで。不安定なアジア地域の状況を考えると安易な基地不要論は逆に危うい将来を招くことになるようです。


ただしこの書籍は出版されたのが十年前の1999年であるだけに、内容は90年後半の諸情報をもとにしていて古めかしさを感じてしまうのが惜しいところ。この十年でだいたいにおいて各国の関係に大幅な変化は無いと思うのですが、この中ではあまり言及されていなかった北朝鮮の動きが今後の安全保障を考える上では重要性を増してきている気がします。

*1:21世紀の今日ではさすがに減っているとは思うけど