9期・46冊目 『日本分断』

日本分断〈1〉 (ジョイ・ノベルス)

日本分断〈1〉 (ジョイ・ノベルス)

内容(「BOOK」データベースより)
第二次大戦後北海道に樹立された人民共和国が、関東北部まで占領、日本は分断され対立する。南側の情報部員の活躍を通して描く南北戦争

ルポライターの如月健治は運転中の事故で切れた電線に触れて感電した際に気絶してしまい、気づいたらいきなり銃を持った男に襲われ、何とか反撃して生き延びます。
助けに来た健治の部下だという厨川桂子の話はわけがわからずまるで別世界のことのよう。
そこは第二次世界大戦末期にソ連が北海道に侵略してきたことにより、北日本共産主義国家が作られ、アメリカを中心とする国連が支援する南日本との間に戦争が起こり、結果的に利根川信濃川を境として日本が分断されてしまった世界。
いわゆる歴史が変わったパラレルワールドに飛ばされてしまったのでした。
そこでは南側の凄腕情報員・如月大尉であるという健治は表向き記憶喪失ということになり、この世界に少しずつ順応してゆく中で自分がなぜパラレルワールドに飛ばされてしまったのか原因を探ろうとするのですが・・・。


もしも第二次世界大戦末期のソ連侵攻により、史実のドイツや朝鮮半島みたいに日本国内が分断したら?という想定のもとに書かれているようです。
(特に記述はないけれどこの世界では原爆投下はなくて、和平交渉やアメリカの占領政策がゴタゴタしたのかもしれないと脳内補完したが、史実の占守島を始めとする北方領土ならともかく、北海道を占領するほどの兵力を運ぶ船舶はどうしたのかという疑問は残るが)
1995年刊行なんですが、そういえば歴史シミュレーション小説がたくさん世に出た時代でした。
その流行も影響しているのかもと思ったのですけど、主人公が別世界に飛ばされるというパラレルワールドものにしたのは著者らしさかもしれません。
この世界では日本が分断されたことによって朝鮮半島統一国家として繁栄していて、まるで立場が逆転しています。
ただ分断までの経過がそのまんま朝鮮戦争を辿っている上に南側の国名が大和民国(だいわみんこく)ってのはちょっと芸が無さすぎると思わざるを得ませんでした。


主人公は相当軍事色の強い民主国家・大和民国の軍情報部に所属するエージェントということになっていて、その彼の目線から見た、歴史が大いに変わった影響については興味深いところではありましたけどね。経済成長が緩やかでバブルが無かったところとか。
実は分断に至る経過にこそ興味があったのですが、実際は主人公近辺の謀略サスペンスに終始していたのがやや退屈でした。主人公についてもご都合的過ぎるし。
続きがあるのですが最終的には統一までいくのかな?
続編読むかは微妙なところです。