4期・53冊目 『鋼鉄の海嘯(8)−英本土奪還』

英本土奪還―鋼鉄の海嘯 (C・NOVELS)

英本土奪還―鋼鉄の海嘯 (C・NOVELS)

架空戦記*1としては珍しいことに外伝でもなく続刊扱いでその後の物語を書いてくれました。
本来、7巻「台湾沖決戦」で完了となったはずですが、続編を望むファンの声が多数届き、編集部と著者を動かしたとのこと。
とある作家の日常「『鋼鉄の海嘯』第8巻「英本土奪還」、いよいよ発売です!」
中央公論社 「鋼鉄の海嘯 英本土奪還」(最下部のコメント欄)
これも架空戦記の中で高い評価を得ている横山信義氏ならではでしょうね。確かに「台湾沖決戦」の終わり方はあっさりしすぎてたし・・・。


ヨーロッパ編の第1部である本編は英本土上陸作戦がメイン。それだけに日米戦を描いた前巻までと違い、陸戦が占める割合が多くなっていて、前半はお馴染み流転のロシア人戦車乗り・ザンギエフが主人公扱い。ドイツ戦車相手でロシア人にシャーマン乗らせるのは可哀想だろうと思いましたがそこはちゃんと読者のことを考えてくれてました。
陸では5号パンター戦車とM26パーシングの対決にドイツ版カチューシャ(?)、空ではF8Fベアキャット・Bf109K・Ta152H・流星など登場兵器に関してはサービスたっぷりですな。
凶悪とも言える戦力を揃えた米軍に対して、この世界では欧州平定して健在なるドイツがどれだけ健闘するか楽しみだったのですが、やはり米軍強すぎ。日本の航空隊も多少見せ所ありましたが。


さて、制空権・制海権を握られてしまった英本土駐留ドイツ軍は苦戦を強いられ、大陸から強力な援軍を派遣しようとするあたりが後半からの山場。しかし情報分析して迎撃の構えも怠らない米軍にこのままではいいところを全てもってかれてしまうと思いきや、ちゃんと史実*2を見本に見せ場を作ってくれてました。
戦力の空白地帯で両軍必死の海上戦の主役は「比叡」と巡洋戦艦「浅間」。さらに意外な活躍を見せるドイツのポケット艦。これぞ架空戦記ならではですなぁ。


さて、日米戦後に欧州へ艦隊派遣にあたり、多少その経緯は書かれており、史実に比べてかなり分が良い講和を迎えて*3平和を喜ぶもつかの間、仲介の労を取ったイギリス亡命政府の要請により昨日までの同盟国と戦わねばならないという苦しい事情が書かれています。
欧州の戦史では国の都合で同盟と敵対を切り替えるのは自然なことのように思えるのですが、三国同盟を単独で抜けて連合国側で参戦したことにそれほどまで罪悪感を抱くのはやっぱり日本人の感覚なのかなぁと思ったり。*4


欧州戦線編はいよいよ次巻で大陸へ。
のこり1巻で終戦まできっちり書くのは無理があるだろうから、きっと全体的な進行は省略。6号ティーガー(タイガー)戦車と対決するザンギエフとか、B29vsジェット機。修理が完了した戦艦「大和」・「信濃」vsビスマルク・ティルピッツあたりをメインに書くのだろうと予想します。

*1:実際のところ最近は横山氏以外は詳しくないけど

*2:ヒント:レイテのハルゼー

*3:何しろ実質戦っていたのはアメリカだけだし、当のアメリカは陰謀が発覚したし

*4:史実のイタリア人はあまり気にしなかったのかな