4期・67冊目 『鋼鉄の海嘯(9)−欧州解放』

鋼鉄の海嘯 - 欧州解放 (C・NOVELS)

鋼鉄の海嘯 - 欧州解放 (C・NOVELS)

英本土を奪還した連合軍はB29によるドイツ本土への戦略爆撃を開始。リバプール湾に六千隻を越す米軍艦艇と英国海軍、日本海軍遣英艦隊を結集し、大規模な大陸反攻作戦を発動した。仏大西洋岸に進出した六式艦戦「清風」と新鋭機P80がMe262と切り結び、米戦艦の艦砲が独防御陣地を粉砕する。だが独戦車部隊は頑強に抵抗を続け、ドイツ大海艦隊も出撃。迎え撃つ「大和」「信濃」――果たして世界大戦の決着は!?

欧州編を描くことで延長された本シリーズもついに大詰めであります。
今まで太平洋を中心とする戦いでは脇役であった英・独の兵器が、しかも1945年以降のヨーロッパで暴れるというまさに架空戦記らしい展開。今までの横山信義氏の作品ではあまり見られなかった組み合わせも描かれたのも、この延長シリーズの特徴ですね。
空はともかく海に関しては、圧倒的な物量を誇る米軍は脇にまわってもらい、必死の抵抗を見せるドイツ軍と限られた戦力で戦う日英軍という形にしたところがいい見せ場となりました。
陸戦に関しては、ザンギエフというシリーズ通しての主人公的人物によって派手な戦車戦が描かれます。極東シベリアから始まって、サイパン・英本土・フランスと世界を股にかけてよく戦いぬいたもの。


ネタバレしますと、序盤の航空戦ではMe262 vs P-80という初のジェット機同士の対戦。史実では朝鮮戦争におけるミグだったはずですが、対空誘導ミサイル登場前のジェット機同士の空戦では速度が速すぎて撃墜が難しいという点もちゃんと書かれてますね。
そして肝心の海戦では、英国の新鋭戦艦を吸収し、新型戦艦も加えて(珍しく)積極的に出撃してきたドイツ海軍とどう戦うか?
旧式戦艦しか持たないロイヤルネイヴィーが戦巧者なところを見せれば、日本海軍は和製ブルックリン軽巡というべき渡良瀬級が登場。金剛級戦艦と協同とはいえ独戦艦*1を戦闘不能に追い込んでしまうのですね。想像はついてたけどやっぱり強いですね。
小口径でも手数の多さが有利は相変わらず。まぁ一般的に口径が大きければ有利だけど、戦はそれだけではないのはわかるのですが、近年はデフォルトと化している気がしますね。


そして遂に「大和」を上回る主砲51cmの戦艦が登場。果たして戦艦「大和」不沈神話が破られるのか??*2
そういや、横山氏の作品では大和を超えるクラスは初めてではないですかね(『鋼鉄のレヴァイアサン』は年代がずっと後なので除く)。欧州制覇してアメリカとまともに戦っていなかったドイツがあれだけの艦隊戦力を保持できたのは不思議ではないです。ただ日本参戦まで潜水艦以外はさほど海戦は経験していなったようなので、実際の運用の面では疑問符がつきますけどね。

*1:元はネルソン級

*2:結末としてはうまく考えたと思う。